#ネタバレ 映画「HACHI 約束の犬」
「HACHI 約束の犬」
2009年作品
犬が思い出させる映画「A.I.」
2009/8/19 21:33 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
リチャードさんがTVの映画紹介で、「日本では人間と犬は主従の関係らしいが、米国では対等なパートナーである」旨の話をしていました。また「最近、離婚が多いことを嘆く」とも。でも映画を観て、なるほど素直にそれを描いていたなと思いました。
ハチ(黒板にHACHIKOと書いてあったのでちょっと感動)は頑としてボール遊びをしません。それは主従の関係にあるものが、することだからなのでしょう。
でもXデーに突然ボール遊びをねだったのは、不吉な予感を感じて先生を引き止めたかったからだと思いました。
まるで黒人奴隷が入れられているような小屋住まいのハチが、戸の隙間から片目でリチャードのいる家をのぞくシーンに、ハチの哀しい気持ちが透けて見えるようでした。
だからこそ先生が出かけるときには強引について行ったのでしょうね。あれは気高いハチの地位確認運動の様にも見えました。
話は少し戻って映画の冒頭になります。
駅のホームで子犬時代のハチと先生が初めて出会うシーン。大勢の中からハチが先生を見初めました。あの時先生はケータイでニコニコ会話しながら歩いていました。
犬はケータイを知らないので、相手のいないニコニコ会話は、自分に向けられたものだと勘違いする時があるんです。その笑顔と、毒気の無い声にハチは立ち止まり見つめました。
そのとき先生もハチを見つめ「愛してるよ!」と言ったのです。もちろん先生は電話の向こうの妻か誰かに向かって発したのですが、犬は自分に向けられたものだと思ったのです。
かくして愛の誓いの言葉とともにパートナーの契りが生まれたのでした。
このあとハチは文字通り永遠の愛を行動で証明することになるのです。
娘のボーイフレンドと先生との会話、結婚式、それらが挿入されていることで、犬との契りが人間同士の愛の契りへつながる教訓映画となっているようです。
スピルバーグさんの映画「A.I.」は、「愛は契約であり、死んでも守らされる」姿を描いていましたが、映画「HACHI 約束の犬」も、パートナーが死んでも忘れない姿を描いていて、犬を使った映画「A.I.」とも観えました。
そしてハチの演技が素晴らしい。
もしかしたら日本の能の様に、ハチの表情の変化ではなく、観客である私の心が動いてただけかもしれませんが、もしそうなら犬を使った能を鑑賞したかもしれないわけです。
はめられて号泣してしまいました。
★★★★★
追記
2009/8/22 9:33 by さくらんぼ
>リチャードがTVの映画紹介で「日本では人間と犬は主従の関係らしいが、米国では対等なパートナーである」旨の話をしていました。
リチャードさんはハチに首輪をしませんでしたが、彼が亡き後、家族は首輪をしました。首輪は主従の関係の象徴として登場したようです。
また、リチャードさん亡き後、初めてハチに逢った妻はハチを抱きしめました。そのときハチは大きくアクビをしたのです。犬は緊張するとアクビをすることがあるようです。ハチと疎遠な妻との微妙な心の距離が描かれていて、ハチ奇跡の名演技でした。たぶん偶然でしょうけど。
追記Ⅱ
2009/9/4 8:12 by さくらんぼ
ひとくちに主従の関係と言っても、善いもの、悪いもの、いろいろだと思いますが、駅長の映画の中の役割は、悪いほうの象徴だったのかもしれません。ある意味、主と奴隷の様な関係。この主は弱いものから搾取するのです。そして最後までその役割演じていたように思いました。リチャードさんと対極的な人物配置ですね。
追記Ⅲ
2009/10/9 6:16 by さくらんぼ
>リチャードがTVの映画紹介で「日本では人間と犬は主従の関係らしいが、米国では対等なパートナーである」旨の話をしていました。
このレビューはリチャードさんの考えを基にしたものあり、日本人である私の考えを基にしたものではありません。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)