#ネタバレ 映画「トリとロキタ」
「トリとロキタ」
2022年製作 ベルギー・フランス合作
孤独
2023.4.3
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)
89分でストーリーもシンプルそうなので観てみました。
これは娯楽作ではありませんね。
娯楽作のつもりで行くと、当てが外れるかもしれません。
ドキュメンタリーではありませんが、ある意味、それに類するような覚悟を持って鑑賞する作品だと思いました。
哀しいお話です。
追記 2023.4.3 ( 孤独 )
これは「孤独」にまつわるお話だったのかもしれません。
ヒロイン・ロキタは10代後半の女性で、トリは小学生ぐらいの子供です。
二人はアフリカからベルギーへ流れ着いてから知り合い、孤独ゆえか、姉弟だと偽って生きています。でも、本物の姉弟のように仲が良いのです。
しかし、ロキタは祖国の家族に仕送りをしなければならず、その分も稼がなければなりません。
それもあって、(もっと稼げる仕事に就ける)偽造ビザを手に入れようとします。
普段もドラッグの運び屋などのヤバい仕事をしていますが、お金のために、さらに危険なドラッグ工場で働くようになります。
すると、仕事が終わるまで、長期間、工場に隔離されてしまうのですね。闇組織にとっては大事な拠点ですから。
孤独を恐れる気持ちが人一倍強く、精神安定剤にもなる弟が必要なロキタなのに(精神安定剤も飲んでいる)、秘密の場所に一人で隔離されてしまい、心のバランスを崩します。
なんとか居場所を見つけ、救出に向かうトリ。しかし、それは闇組織を相手に、ビジネスの契約を破る「裏切り行為」になるのです。
追記Ⅱ 2023.4.3 ( よそ者 )
異国で二人っきりのトリとロキタは、住民からも、警察からも、闇組織からも、よそ者です。
映画「ランボー」にも描かれていましたが、とかく、よそ者は信用されません。
正体が分からないので、嘘をつかれ、裏切られることを恐れるからです。
その辺りの事情がラストのエピソードに要約されているように見えます。
ドラッグ工場で闇組織を裏切って逃亡してきた姉弟は、道路にたどり着いて、クルマを拾おうとします。
ロキタが止めた一台のクルマにはご婦人が乗っていましたが、陰に隠れていたトキを呼ぼうとすると、「本当は二人だった」「嘘をつかれた」と思い、警戒して逃げてしまいます。
二代目に止めた車は追ってきた闇組織のものでした。裏切り者になったロキタの運命は・・・。
追記Ⅲ 2023.4.3 ( 映画「運び屋」を連想 )
この作品、主人公たちは黒人ですが、警察官や、闇組織の者たちは、よくあるドラマのように、黒人を猿あつかいするようなステレオタイプの悪人には描かれていないようです。
もちろん、優しくはないし、闇組織のある者はロキタに非道なレイプまでするけれど(この男にとっての精神安定剤か)、むしろ、それでも職場のイジメの方が冷たいのではないか、と思わせるのは不思議です。ドラッグ工場で先輩の仕事の教えぶりが、堅気の世界でも、まあまあ合格点な雰囲気だからでしょうか。
そこに入っていき、その世界の秩序を乱し、彼らに嘘をついて、ビジネスを裏切る姉弟は、彼らから見れば、もっと悪人なのでしょう。
クリント・イーストウッド監督の映画「運び屋」を連想しますが、あちらの老練な主人公・アールと違い、この姉弟は、危険な道を渡るには、まだ未熟すぎました。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)