#ネタバレ 映画「山の音」
「山の音」
1954年作品
子どもは糾弾の道具にも使われる
2016/9/28 10:53 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
娘が結婚した場合、父には娘だけでなく「義理の息子」もできたことになります。そのとき「妻の『氏』(妻が戸籍の筆頭者になる)」の婚姻届を出せば、「父の養子」になったと思っている人もいるようですが、それは間違いです。
「父の養子」になるためには、まず①父との「養子縁組届」を出す(普通は父母・双方との養子縁組届)。そして②「婚姻届」を出すことが必要です。
この場合、②の「氏」は夫・妻のどちらを名乗ってもよいですが、「氏」を名乗った方が戸籍の筆頭者になります。だから無難なのは「夫の氏」を名乗る方です。男女差別をするつもりはありませんが、妻が筆頭者だと珍しいので、後に世間様からいろいろと詮索される心配がありますから(これは一般論ですから、予定のある方は、最寄りの市町村役場で具体的にご相談ください)。
こんなふうに子供(男女どちらでも)が結婚すると、新しい親子関係が発生しますね。家庭内にいろんな「さざなみ」が起こります。
この映画「山の音」は、息子の嫁に「入れ込み過ぎた」父の物語。
息子の嫁は「義理の娘」ですから父が可愛がって当然です。嫁も「義理の父」に甘えて当然です。しかし「嫁の性格」が「夫よりも義理の父」とフィットしすぎてしまったのです。
やがて父の気持ちの中の「娘への愛情が、微妙に男女のものに接近」してしまった。かろうじて境界線内に踏みとどまってはいますが、はた目には「静かな三角関係」が生まれたようにも見えるかもしれない。やっかいなのは父にその自覚が無い事。
でも、生来父をライバル視(会社も同じ)していた息子は気づいた。しかし父が口説いているわけでもないし、嫁が誘惑しているわけでもない。もちろん肉体関係があるわけでもなさそうだから、声高に父を糾弾することも出来ない。もちろん、そんなこと嫁にも言えない。いつしか、やりばのない息子も浮気を始める。
父は息子の浮気に気づき、憤慨し、嫁が可哀そうだと、聖人君子づらをして(息子からはそう見える)息子に迫る。とうぜん息子は相手にしない。
やがて父は助言もあって「息子夫婦と別居」を提案する。しかし義理の娘からも「夫は冷たいので、お父さんが心の支え。だから別居したくない」と言われ…。
実はこの嫁、夫への当てつけで、密かに「子どもを中絶」していた。又、夫の不倫相手も「身籠り」、夫への当てつけもあって、こちらは「産むことを決心」した。
「子はカスガイ」とも言いますが、だれも、かれも、みんな、子どもを「糾弾の道具」に使っていたのでした。
昨今、メリットばかりが強調される三世代同居にも、一皮むけば、いろいろありそうですね。
モノクロ映画ですが、山村聰さん演じる・父がとても魅力的。しかし昔の映画は「シリアスな人間ドラマ」を描くのが上手ですね。今は「ながら見」する「TVドラマの大衆迎合」に、多くの映画までもが引っ張り込まれている気がします。
★★★★★
追記 ( 戸籍の動き )
2016/9/28 14:02 by さくらんぼ
>「父の養子」になるためには、まず①父との「養子縁組届」を出す(普通は父母・双方との養子縁組届)。そして②「婚姻届」を出すことが必要です。
ちなみに①で、父の戸籍に「養子・太郎」などと記載されます。「長女・花子」の隣に、父の子どものように書き込まれるわけです。
その後②で、すぐ「花子と太郎が父の戸籍から抹消」されます。この足跡(記録)に価値があるのです。そして太郎を筆頭者とした夫婦の新戸籍が作成されます(「夫の氏」を名乗った場合)。
追記Ⅱ ( 嵐では「ベートーヴェン」に避難する )
2016/9/28 14:27 by さくらんぼ
私の辛い経験から言うと、台風が接近しているときに「好きな人に告白」したりすると断られる確率が高いです。彼女が無意識にも「私の接近と、台風の脅威を混同」するためだと思います。
そんな私ですが、先日、新しいことに気づきました。台風が接近して不安な時は「ベートーヴェンのシンフォニーを聴くと勇気づけられる」という事実です。普段は感じないのですが。私の知っている障害者の方はベートーヴェンがお好きなようですが、その理由の一端を想像することができたような気がしました。
そんな折、映画「山の音」を観たら、台風の接近シーンで、独り、夫の帰りを待つ妻・原節子がクラシック音楽を聴いていたのです。
そして帰ってきた夫の、「のんきに遊んでるのか!」みたいな視線に、「台風が怖かったから、音楽聴いてたの」と弁解するシーンがありました。
タイムリーと言うか、「ある、ある」と、私は独りうなずいたのでした。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)