「ベーシックインカム」について
2024.1.11
@ ときおりベーシックインカムが話題に上っていますが、国民健康保険も、国民年金も、雇用保険、生活保護なども社会保障の傘の下にあります。
ベーシックインカム導入時には、予算の関係もあり、それらとの整合性を考えなければなりません。基本的にはいくつかの旧制度が廃止されるわけですが、国民年金などは何十年も加入している人がたくさんいるので、その人たちの中に、不利益を被る人が出て、不公平にならないよう、経過措置を設けるなどして、段階的に行う配慮等も必要で、制度設計は困難を極めると予想されます。少なくとも私の頭ではすぐに良いプランは思い浮かびません。
さらに、いくつかの社会保障が無くなるわけですから、ベーシックインカムをもらった人は、それをぜんぶ消費するのではなく、自分で預金したり運用したりして、非常時の貯えにしなくてはいけません。つまり、ある意味、社会保障が、役所の責任から自己責任になるわけです。
この分野、私も不勉強ですから間違っているかもしれませんが、現時点ではこのように認識しております。
ところで、亡き母は心臓手術を生涯に2回しました。正確には記憶していませんが医療費は合計2,000万円ぐらいのようでした(今の金額ならもっと多いと思います)。しかし、国民健康保険などのおかげで、サラリーマンの給料1~2か月分ぐらいの支払いで済んだはずです。手術をしなければ40歳代で終わっていたかもしれない人生ですが、おかげさまで80歳代まで生きることが出来ました。
残ればよいですが、ベーシックインカムになり、もし国民健康保険などが無くなったら民間の医療保険に入る必要があります。今元気だからと何も入っていない人はこのような手術が容易に出来ないのです。米国がまさにその状態で(ベーシックインカムも無い)、マイケル・ムーア監督の映画「シッコ SiCKO」はそれを描いた問題作です。新型コロナウイルス騒動でも医者に行くのが遅れた人がいたと聞きます。
( 映画「シッコ SiCKO」の追記Ⅳ 2020/4/21 9:09 by さくらんぼ より加筆再掲 )
@ ベーシックインカム実現の問題点。 これが正解だとか、これがすべてだとは言いませんが、まとめてみました。
① 毎月10万円(あるいは7万円)を支給する予算はどこからもってくるのか。
② 予算のめどがついたとしても、毎月10万円(あるいは7万円)の現金支給だけでは解決しない社会福祉の問題は、どう解決するのか。
③ もし①②の問題が解決したとしたとしても、現在の社会福祉制度からベーシックインカム移行時に予想される不公平問題をどう解決するのか。
(追記)コロナ過もあってかベーシックインカムへの期待が高まり、先の総裁選挙ではこれに言及した候補の方がいらっしゃいました。あのプランは面白いと思いましたが、残念ながら世論の関心は高くなかったようです。そうこうしている内に、ロシアのウクライナ侵略が始まり、防衛に対する常識がひっくり返される事態になって、日本も他人ごとではなくなりました。今は、日本の防衛を考える(予算も)ことが政治家の優先課題かもしれません。
(追記2)ベーシックインカムは、日本のような先進国よりも、社会保障制度があまり整備されていない開発途上国の方が、比較的導入しやすいのでしょう。既存の制度が未発達な分だけ、②③の問題があまり発生しないからですね。ですから、日本でも朝ドラ「おしん」の時代なら、もっと簡単に制度設計できたのかもしれません(国が貧しくて①の予算も無いかもしれませんが)。
これは工業製品の改良の場合に似ています。改良する場合、旧製品との互換性を保つために、かなりのエネルギーを使うそうです。もし互換性を放棄すれば(当然に非難も予想される)、新技術のみに専念できますから、高みが違ってくるはずです。(2022.5.8)
( パレット記事からの加筆再掲 )
@ ベーシックインカムは国民年金から始めてみる
『 さらに先の総裁選挙では、候補者の一人の方が「国民年金保険料をゼロ円にして、国民年金満額を支給する」と提案していました。事実上の国民年金ベーシックインカム化です。この案では、幸いなことに生活保護制度は継続されるようですので、万一生活に困っても心配ありません。財源は消費税の増税です。増税のリターンを分かりやすい形で国民は受けるわけです。』
( 映画「茲山魚譜-チャサンオボ-」の追記より抜粋 )
「国民年金のベーシックインカム化」と言うと、若者には関係のない話だと思うかもしれませんが、そうは言いきれません。
(2022年度・毎月16,590円)の掛け金がゼロになる上に、将来は若者にも満額の国民年金(現在は年間約78万円)が保証されるからです。現状、満額支給でない人も少なくないようですが、その人たちも救済されるはずなのです。
これだけでも安心感が違うのに、若者は浮いた掛け金を公的・民間の個人年金に回せば、より多くの年金額がもらえる事になりませんか(国民年金支給額には税金等も投入されているので、そうではない個人年金の場合には、同じ額の掛け金でも、支給額が減る場合があります)。
現役サラリーマンの収入には及ばないかもしれませんが、夫婦二人が個人年金も行えば、年金収入はかなり増額となるはずです。
もし、老後の年金が満額保証されるだけでなく、増やすこともできるなら、若者も現在をより楽しめるのではないでしょうか。そして、皆があまり老後の心配をせずに消費できれば、経済も回ろうというものです。
消費税が増税になるのを心配しておられる方もいらっしゃるかもしれません。でも、前述したように国民年金の掛け金がゼロになるのです。さらに、浮いた掛け金を公的・民間の個人年金に回せば、年金額が増えるうえに、掛け金は所得税や住民税の控除にも出来るはずですので、増税分の消費税の一部も回収できるのではないでしょうか。
そして、「国民年金のベーシックインカム化」が成功したら、「若者のベーシックインカム」にも追い風になるように思います。少なくとも行政改革への心理的ハードルは下がるのではないでしょうか。いきなり若者に毎月7万円支給は困難だとしても、とりあえず部分的な行政改革をして毎月1万円でも実行し、それが、うまくいけば、段階的に増額しても良いのです。段階的に行えば「ベーシックインカム実現の問題点」も回避しやすいのではないでしょうか。
( 映画「老後の資金がありません!」の私のレビューの抜粋・加筆再掲 )
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)