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#ネタバレ 映画「2012」

「2012」
2009年作品
水を飲む人は井戸を掘った人の恩を忘れない
2009/11/29 10:17 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

ヒマラヤに津波が迫ってきて、それに対峙する宗教指導者のシーンが描かれているパンフを見ていましたら、偶然にFM放送でNHK「プロジェクトⅩ」のテーマ曲「地上の星」が流れてきました。なぜか、それが妙にはまるんですね。あの高僧の名も歴史の中に消えていくのでしょう。

2012の悲劇は古代マヤ暦で予言されていたようですが、預言者の氏名までは話題になりません。

モナリザなど世界の主な芸術品は箱舟に積み込まれたようです。作者が生きていたとしても、作者自身ではなく作品が救出されたのでしょう。作家ジャクソンの著書を愛する2012プロジェクトの科学顧問エイドリアンも、個人的に著書を箱舟に確保しても作家自身については無関心でした。イエローストーンで出会っていたのにです。

そのため、ジャクソンは個人的に必死の努力をすることになるのです。これは、その皮肉な姿を描いた映画です。本当は、ジャクソンは失敗した方が映画の主題に添う形になるのかも知れませんが、それでは興行成績に関わるのかも知れません。

米大統領も箱舟には乗らず、無名の人々を励まし続けました。津波に流された空母が襲ってきたのは皮肉でした。

2012の予言が現実だと突き止めたエイドリアンの友人科学者も、VIPであるはずなのに、迎えが来ないために箱舟には乗れませんでした。

イエローストーン公園でミニラジオ局のDJをしているチャーリーも、2012の秘密を探っていましたが、いよいよそれが現実となったとき、「俺が最初に報道したことを忘れないで欲しい」という意味のことを言い、殉職しました。

価値ある人たちも船に乗れなければ、名前さえも後世には、やがて忘れられていくのでしょう。マヤの預言者の様に。

DJチャーリーの、後世まで「名前を忘れないで欲しい」という気持ちは、積み残された多くの者たち共通の遺言でしょう。ここに来て、あの「地上の星」がピッタリと来た理由が分かりました。この映画が語っていたことは、ある意味、「プロジェクトⅩ」と似ていたのかも知れません。

科学技術で世界をリードし、そのうえ米国の親友だというのに日本は陰が薄く、インドと中国ばかりに焦点が当たった今回の映画は、少々見ていて不満もありました。確かにニュース報道からみても、現実に、これからは両国の時代かも知れませんが、映画の主題を考えると、日本が主役級であるがために、逆に影が薄いのだと、半ばひねくれた見方をしてしまうのでした。

毛沢東の言葉を思い出します。「水を飲む人は井戸を掘った人の恩を忘れない」。箱舟に日の丸がついていたのは、そのためだと慰めています。

★★★★

追記
2009/11/29 21:09 by さくらんぼ

>毛沢東の言葉を思い出します。「水を飲む人は井戸を掘った人の恩を忘れない」。

正確には、井戸を掘った毛沢東に感謝する言葉、ということで、毛沢東ゆかりの言葉、というのが正しいようです。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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