
#ネタバレ 映画「ブリグズビー・ベア」
「ブリグズビー・ベア」
2017年作品
エディプスコンプレックス
2018/7/24 9:29 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
これは誘拐のお話です。
映画「八日目の蝉」も思いだしました。
映画「八日目の蝉」では、誘拐された子どもが少女の頃に発見されたのに対し、映画「ブリグズビー・ベア」の子ども(主人公・ジェームス)は、大人になってから見つかるのです。
誤解を承知で極言すれば、大人になってしまったジェームスに必要なのは、友だちや恋人であり、もう本当の両親は必要ないのかもしれません。
さらに言うなら、ジェームスは、たとえ誘拐犯であっても「父と息子」の別れの儀式をする必要がありました。
多分これは「エディプスコンプレックス」の物語。
★★★★
追記 ( エディプスコンプレックス )
2018/7/25 8:16 by さくらんぼ
「 男の子は3歳から6歳にかけて、エディプス王と同じように、父親に敵意を抱き、母親に対して愛情を求めようとする性的願望をもっているとみなされる。こうした性的願望は、いうまでもなく近親相姦(そうかん)を意味するから禁止されるものである。
この願望のおこる時期のことを発達的には、エディプス期あるいは男根期とよんでいる。①父親に敵意を抱くために、②男の子は、その報復として去勢されるのではないかという恐怖をもつようになる。
この恐怖が契機となって、近親相姦的願望が抑圧され、③父親のようになろうとする同一視によってエディプス・コンプレックスは克服され、清算され、発達的には潜在期に移行していく。
④しかし思春期に達すると身体的成熟に伴い性的衝動が強くなり、エディプス的願望も復活してくるが、その願望は他の異性に向けられることによって克服される 」
( コトバンクの「エディプス・コンプレックス」 日本大百科全書〈ニッポニカ〉解説より抜粋。ただし文中の①②③④の数字は、私が付記しました。 )
追記Ⅱ ( ジェームスの戦い )
2018/7/25 9:00 by さくらんぼ
ジェームスを誘拐してきたのは(寂しい)妻だったようです。
悩んだあげく、わが子として育てる決心をした夫は、25歳で救出されるまで、ジェームスを一歩も家から出さず、着ぐるみのクマ、「ブリグズビー・ベア」が出てくるオリジナル・ドラマを作って教育していました。誘拐犯なりの、子への愛情は持っていたのです。
救出されたジェームスは、すべてを知った後も「ブリグズビー・ベア」を求めますが、当然に、本当の両親がそれを歓迎するはずがありません。本当の良心にとって、それは「悪夢と同義語」ですからね。これが①②なのかもしれません。
しかし、気持ちを押さえきれないジェームスは、刑務所にいる誘拐犯の父とも面会し、今度は、自ら「ブリグズビー・ベア」の続編を作り始めます。それは、ネット配信で人気になりました、すると、そこで集めたお金を使って映画化までしたのです。これが③でしょうか。
こうやって、ふたつの親を使い、幼い心のままだったジェームスは、心身ともに25歳の大人へと脱皮していくのです。
誘拐犯に監禁されていたとは言え、愛情ある両親の元、(良いドラマだけ見て育った)率直で人懐っこいジェームスは、すぐに同世代の若者に溶けこもうとしました。最初はギクシャクしましたが、なじむのも時間の問題でしょう。これが④ですね。
私は専門家ではないので的外れかもしれませんが、このように思いました。
追記Ⅲ ( 初恋の人 )
2018/7/25 9:03 by さくらんぼ
誘拐犯の父が作った「ブリグズビー・ベア」に出てきた、美人だけど素人役者のヒロインと、ドライブインで偶然再会するシーンがありました。
彼女はウエイトレスをしていました。シングルマザーのようです。当然にジェームスのことは知りません。
でも、ジェームスにとっては初恋の人と同じ。
「アイドルに告白だけして去って行くファン」のようなジェームスと、事件を知り複雑な心境の彼女。ウルっとくるエピソードです。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)