#ネタバレ 映画「30年後の同窓会」
「30年後の同窓会」
2017年作品
「ドクはなぜ誘ったのか」、その本当の理由を悟る旅
2018/6/19 9:08 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
映画「終わった人」も良かったけれど、この映画「30年後の同窓会」は素晴らしい。
人は誰でも、大なり小なり、人生に汚れながら生きていくものです。
これは、その苦悩と哀しみを共有した、男たちの物語。
チラシには「50才のスタンド・バイ・ミー」と書いてありますが、私は映画「ハリーの災難」も思いだしました。
予告編で感じるよりも、さらに深い話です。
★★★★☆
追記 ( おじさん3人 )
2018/6/19 9:13 by さくらんぼ
よく「キャラが立つ」とか言いますが、この映画も、脇役まで人間がしっかり描かれています。
特に主役のおじさん3人。
それぞれ個性が違いますが、私の中には、あの3人全員が住んでいるのかもしれません。
おじさん同士として、彼らの屈折具合が、理解出来るような気がするのです。
いつのまにか、本当にそんな年齢になってしまいました。
追記Ⅱ ( 英雄の条件 )
2018/6/19 9:30 by さくらんぼ
この映画を観ると、
新幹線で、命をかけて乗客を守った青年を、
あらためて称えずにはいられません。
追記Ⅲ ( 3人の黒歴史 )
2018/6/19 16:21 by さくらんぼ
30年前、3人は兵士で、前線にいました。
そして、もうすぐ任務が終わるという時、とつぜん数か月の延長が決まったのです。
呆然とする3人。ストレスのたまった彼らは、医療用の麻薬を遊びに使い、憂さ晴らしをしました。
その時、部隊の仲間が敵にやられ重傷を負ったのです。痛みを和らげるために、こんな時は麻薬を投与することがあるようです。
しかし、3人が遊びに使ったので、麻薬の在庫は無くなっていたのです。だから重傷の仲間は、七転八倒の苦しみの中死んでいきました(自衛隊にはあるでしょうか。もし無ければ悲劇では…)。
この真実は、死んだ兵士の遺族には伝えられませんでした。伝えても遺族を苦しめるだけ、だからでしょう。
この時、3人がどれほどの罪の意識と、自己嫌悪に陥ったのか、それは想像するのも苦しいほどです。
中央にいる、一番真面目そうなドクが、一人で罪をかぶって服役しました。
苦しむ他の2人。黒人のミューラーは宗教にすがり、やがて牧師さんになりました。ロックなサルは、酒浸りになり、やがてバーを営むように。
3人は、その黒歴史を封印するがごとく、除隊すると散っていきました。それっきり一度も会うことなく。
追記Ⅳ ( 「ドクはなぜ誘ったのか」、その本当の理由を悟る旅 )
2018/6/19 16:40 by さくらんぼ
ドクの妻は亡くなり、一人息子は戦死しました。
軍からは息子を「英雄として埋葬」する旨の連絡が来ましたが、自分たちの黒歴史を思いだす時、軍は息子の最後について、本当に「真実」を語っているのだろうかと、ふと、そんな思いに、かられたのかもしれません。
そして、「真実を確かめれば、自分たちの胸の中に刺さっている黒歴史からも、解放される」のではないのか。そんな直感もあって、30年ぶり、仲間に声をかけたくなったのでしょう。
表面的には、「家族がいないから、葬式につき合ってくれないか」という理由でしたが。
追記Ⅴ ( 社会体制という儀式 )
2018/6/20 18:27 by さくらんぼ
ふと、そんな言葉が浮かびました。
体制に逆らうことは、儀式を乱すこと。その者は社会からはじき出され、ときには罪人とされることもあるのです。
この映画「30年後の同窓会」は、そんな3人が、30年かけて体制に戻ってくるまでを描いていた、のかもしれません。
追記Ⅵ ( 「残酷な真実よりも優しい嘘」 )
2018/6/21 9:00 by さくらんぼ
劇中のTVに、ビン・ラーディンが米軍に捕まったニュースが流れます。3人はそれを見て、「アメリカの言い分も、うさんくさい…」、そんな意味の話をしていました。
自分たちの黒歴史についても、米軍は真実を公表していないので、なおさら不信感がわくのですね。
だから今回、ドクの息子が戦死した話でも、真実は隠されているのでは、と疑っているのです。親なら、ぜひそれを知りたい。
遺体を軍から引き渡された時、ドクが「息子を見せてくれ」と言うと、軍の上官は、恐縮しながら、紳士的に「それは、おすすめできません」「思い出の中の息子さんを、大切にしてあげて下さい」と言いました。私が上官でもそうしたでしょう。
普通なら、その上官の気持ちを察し、従う人が多いのでしょうが、逆に、それがドクの不信感をいっそう深めました。だから、「見せてください」と食い下がったのです。
上官は、困惑しながらも静かに言いました。「息子さんは後頭部から撃たれました。その弾が飛びだす時に、大きな傷が出来たのです」と。
それでも、ドクは「見せてください」と…
息子と面会後に、ひどくショックを受けて座り込んだドクは、ぽつり、「顔がなかった」と言いました。
面会中、2人の親友は、上官についてきた一人の部下に、話しかけていました。顔をこわばらせていた部下に、サルは寅さんみたいな話術で話しかけ、真相を吐露させていました。
それによると、「部下とドクの息子は、同じ部隊の友だちでした。(戦場でも)交代でコーラを買いに行くのが日課でしたが、その日は部下の番にもかかわらず、息子が買いに行ったのです。そして油断していた店の前で、敵から後頭部を撃たれた」のでした。部下にも3人のような黒歴史が出来ていたのです。
軍はこの話を封印し、「勇敢に戦死した英雄」にしていました。
そしてアーリントン墓地に埋葬しようとしていましたが、ドクはそれを頑として拒み、家に連れて帰ることにしました。
帰宅途中、3人は、黒歴史の被害者の家にも、立ち寄ることにしました。そこですべての真実を話し、許しを請いたいと思って。
家では年老いたお母さんが出迎えてくれました。最初は何ごとかと心配しているようでしたが、戦友だと言うと歓待してくれました。
でも、とうとう最後まで、3人は真実を話せませんでした。やはり「残酷な真実よりも優しい嘘」ですね。
結局3人は、真実を話してくれなかったあの上官と同じ、優しい嘘つきになったのです。
それでも、何かしら吹っ切れた3人。
帰宅すると彼らは、ドクの息子も、英雄として埋葬することにしたのです。近所の墓地に。
儀式の終わり、棺を覆っていた星条旗をきれいにたたむと、サルはドクに渡しながら言いました。
「 取っておけ。色々あるが、私たちの国の旗だ 」と。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)