#ネタバレ 映画「おと・な・り」
「おと・な・り」
2009年作品
想像力で見るものもある
2009/5/24 15:54 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
ラブレターとして送られた花束を見ているとき、人は花束を通して贈り主を見ています。
ふるさとの写真を見ているとき、人は写真を通してふるさとの想い出を見ています。
想像力で見るものもあるのですね。
部屋が心の暗喩ならば、お隣どうし、物音を通じて、相手の心の中を覗いていたのです。恋愛初期の兆候みたいですね。
カメラマンもフラワー・アレンジメントも、見せることで勝負する仕事ですが、さすがアーティスト、想像力をむだに持っているわけではありませんでした。創造には想像力が必要なのですから。
壁越しに歌で慰めるシーンはツボにはまりました。かつてウッディ・アレンのなんとかと言う映画を見たときに、あちらは電話越しでしたが、そこでハーモニカを吹いて、音楽で気持ちを伝えるシナリオにすればよいのに、と残念に思うシーンがあり、まるで自分の失恋話のように心に残っておりました。
あれから20年ぐらいたちましたが、やっと、その想いを、この映画で成仏させることができました。
あの、レトロで静かなアパートは魅力的です。ありそうで、なかなか、見つからない物件ですね。たぶん。
★★★☆
追記 ( バケツ一杯の水 )
2016/2/17 9:19 by さくらんぼ
元気な時にはClassic、少し落ち込んだ時にはJAZZを聴きます。
でも、もっと哀しい時には女性の弾き語りが心にしみる。
フォークギター一本で勝負する、マイナーな歌手さんたちのYouTubeコンサートです。
彼女たちの歌声が、今、私の心を一番熱くします。あらためて女性の声は美しいと。
共感覚で聴くその声は、さながら“冬木立にかかった羽衣のよう”。
凛とした冬木立はギターの旋律、艶めかしく風にゆれる羽衣が女性ボーカル。
特に女性ボーカルは“幽体離脱した彼女の魂”のごとく。
無重力の宇宙船内で、バケツ一杯の水を、そおっと空間に浮かべた感じが、もっと近いかな。
それが水銀で作ったオスカー像の様に、ときにはもっと細長いものの様に、変幻自在にゆらめくのです。
その水がエネルギッシュなゴールドか赤銅色に輝いているなら申し分ありません。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)