
#ネタバレ 映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」
「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」
2015年作品
人は酔い、そして醒める
2016/8/10 15:02 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
ランチタイムの後なので、また少し寝てしまいましたが、映画館でもらってきたチラシを見ていたらヒントがありました。
チラシには紙を挟んだタイプライターを前にして、左指にタバコを挟み、右手にウイスキーのグラスを持って、こっちを見ているトランボの姿があります。
シナリオを書きながら、ふと手を休めてアイディアを練っているところなのでしょう。しかしウイスキーの構図が浮いている様にも感じられます。なにか不自然、付け足し感があります。
この映画「トランボ」の主題は「酔い」ではないでしょうか。
「人は酔い、そして醒める」という映画なのかもしれません。そして不思議な事に「酔っていても美は分かる」という。
主人公・トランボは「酒に酔い」ながら「インスピレーション」を得て小説を書いています。その酔いは、ときに「悪酔い」となって家族を苦しめました。
そして映画の背景となっている「赤狩り」も、ある意味「時代の悪酔い」だったのです。しかし「時代が悪酔い」していてもトランボが密かに書いた「美」は評価されました。
どちらの酔いも、いつかは醒めます。家族の危機は回避され、「赤狩り」も終わりを告げます。
主人公・トランボはとても魅力的な中年紳士として描かれています。奥さまや子供たちは幸せ者。こんなトランボに逢うがために、映画を観るのも悪くありません。
★★★★
追記
書いてはみましたが、これで腑に落ちたわけではありません。なにか胸のつかえが残ります。ターゲットが違う可能性もあります。以前なら書かなかったでしょう。しかし座標軸のどこかに一手を打たないと始まらないので、このままにしておきます。また何か思いつく吉日まで。
「 明日ありと 思う心の仇桜 夜半に嵐の 吹かぬものかは 」
( 親鸞聖人の歌と伝わる )
追記Ⅱ ( 人生をオセロゲームにするシナリオ )
2016/8/10 22:10 by さくらんぼ
>…しかし「時代が悪酔い」していてもトランボが密かに書いた「美」は評価されました。
>どちらの酔いも、いつかは醒めます。家族の危機は回避され、「赤狩り」も終わりを告げます。
トランボの妻は、夫が仕事に熱中しすぎて家庭崩壊の危機になったとき、「前の彼と別れた理由は〇〇だけど、あなたには、それが無かったから結婚したの。でも、今のあなたは前の彼と一緒よ。このままでは家庭崩壊だわ」と、子どもにでも聞かせるように優しく言ったのです。あの会話は、理性的な点において「似たもの夫婦」という言葉を思いださせました。
酒好きで、仕事に熱中しすぎて、ときどき脱線するトランボですが、「寅さん」みたいに人情家です。
それどころか、私はシナリオライターという仕事をしているトランボは、自身の行動を「常にハッピーエンドのシナリオになるよう俯瞰している」気がしたのです。それが彼のゆとりであり、男としての色気でしょう。
彼がなぜ、安い報酬で質の高い仕事をし、ゴーストライターまでやったのかというと、それは意地もありましょう、生活費が欲しいからでもありましょうが、「とにかく人気作品をたくさん世に送りだしておけば、最後にはオセロ大逆転みたいな、ハッピーエンドになる計算があった」からではないでしょうか。
追記Ⅲ ( トランボの悟り )
2016/8/10 22:24 by さくらんぼ
つまりトランボの書いた「シナリオの最高傑作が、彼の実人生」だったのです。
トランボは親鸞聖人みたいに「悟り」を開いたわけでは無いでしょうが、「人生をシナリオ化」することでそれに似た行動をとることができたのでしょう。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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