
#ネタバレ TV「カバチタレ!」
2001年
カバチタレ!(全11話) - フジテレビ ONE TWO NEXT(ワンツーネクスト) (fujitv.co.jp)
LGBTQのお話か
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
なんとなく録画してみたら、ストーリーも一ひねりしてあり、意外と面白いドラマでした。そして、これはヒロイン・千春(深津絵里さん)が行政書士で活躍するお話。リアルな行政書士の心情は知りませんが、相当デフォルメしてあるのではないでしょうか。徴税吏員のTVドラマ「ゼイチョー・・・」のように。
田島隆さん「カバチタレで行政書士を22年描き続けた」 漫画原作家・特定行政書士・海事代理士 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
テレビドラマ「カバチタレ!」を5話まで観ました。Wikipediaによると原作漫画とは内容が違うようですが、私は原作を知らないので、気になりませんでした。
デフォルメされているのでしょうが、5話までに観た事を書きます。主人公たち行政書士は、自分たちの事を「代書屋」と言う事があるようです。相手が検事だったり、市井の人でも、真っ当そうな人の場合は行政書士と言いますが、そうではない場合は、ドラマでは相手からこう返される事があるのです。
相手 :「(少し用心しながら)あんた弁護士か。」
自分 :「行政書士です。」
相手 :「なんや、代書屋か。代書屋が一体なんの用や?」
みたいになりかねないので、自虐的な防衛策なのでしょう。
又、劇中の婦人警官とヒロインは犬猿の仲です。依頼人を守るために、ヒロインが警察署まで乗り込んで話をした時、「行政書士です」と自己紹介すると、弁護士かと思っていた署員たちが、いっせいに(侮蔑の)笑い声をあげるシーンもありました。
すでに書いたように、ドラマですからデフォルメされていると思いますが、私の知る限り、少なくとも区役所では侮蔑心などはありません。士業間の序列など考えないですし、国家試験に受かった士業の人たちは、自分たち地方公務員よりは優秀だと思っている人も多いのではないでしょうか。ただ、地方公務員の世界では、あまり「先生」と呼ぶ習慣は無いので、電話で「行政書士の○○さんはいらっしゃいますか?」などと言うかもしれません。
それから、弁護士が、自分の所に来た依頼人をつれて行政書士事務所を訪れ、「ご要件が私の専門外ですから、こちらでご相談に乗っていただけないでしょうか」などと言って、行政書士に頭を下げるエピソードもありました。聞くところによると、士業の人は、このようなネットワークを持っていて、専門外の客を、紹介し合うようですね。
そして、この弁護士の話には後日談がありまして、要件が解決し、挨拶に来た弁護士が帰り際に言うのです。「あなた方は行政書士なのに、弁護士の仕事にまで踏み込んでいるようですね。今度見つけたら容赦なく撃ち落としますから」と。本当は、これを言いたかったのかも知れませんね。
ヒロイン・千春(深津絵里さん)は容姿も言動もボーイッシュです。対して、千春が友だち申請した希美(常盤貴子さん)は女性的。最初は単なる女友だちと思いましたが、6話ぐらいまで観て感じたのは、千春はLGBTQで、希美はストレートではないかという疑念です。
ふだんは言いたい事をポンポンいう千春ですが、事務所の手伝いを辞める希美に対して、口数が減り、万感の思いを感じさせるお芝居を見せる千春に、もしかしたら「恋」と思ったのです。このドラマの最初の放送は2001年で、当時は、まだ今のようにはLGBTQはオープンではなかったと思います。そんな時代を感じさせるお話なのではないでしょうか。
その秘めた情熱的な世界観が(当時は問題行動だったのか)、行政書士が裏で弁護士のような活動をするという物語と(本来は問題行動らしいが)、相似形になっているのかもしれません。
(2024.9.6~2024.9.11のパレット記事の加筆再掲)
追記 2024.9.14 ( 「鉄人28号」という戒め )
ヒロインが勤める行政書士事務所の大野所長(陣内孝則さん)は、往年の人気アニメ「鉄人28号」の大ファンです。そう言えばお顔(特に眼)も似てますし、一人の時には、大人げなくそのフィギアで遊んだり、アニメのワンシーンが出て来たりもします。
このドラマを中盤まで観たら、彼は部下・千春(深津絵里さん)の親友である希美(常盤貴子さん)に「惚」の字で、初心者向けの法律の本をプレゼントしました。そして、その本には、大野が「ここに正義はない。正義はお前の中にある」と書いてありました。
この言葉は、「ある時は正義の味方 ある時は悪魔の手先 良いも悪いもリモコンしだい」という「鉄人28号の主題歌」の抜粋と、符合しているのですね(「鉄人28号」にはAIが入っておらず、リモコンで動く単純マシンだったのです)。
そしてそれは、「全体の奉仕者」である公務員とは違い、依頼人のためという「一部の奉仕者」として動く行政書士などは、心して正義の『鉄人28号』にならなければいけない、という、自らを律するシンボルなのでしょう。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)