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ネタバレ 映画「鑑定士と顔のない依頼人」

「鑑定士と顔のない依頼人」
自由を与えるのが愛である
2014-01-28 08:56byさくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

二度観れば、もう少し気の利いたレビューが書けるのかもしれない、とも思うのですが、されとて、もう一度観ようと言う気も起きず・・・

でも、何にも書かずに忘れるのが、ためらわれる上質な作品でもあるので、もう一度観たい気が起きない理由など、とりあえず書いておこうと思います。

プロの鑑定士が、素人が持ち寄った骨董品を鑑定する人気番組があります。たまに観るだけですが、けっこうニセモノも登場しています。ニセモノを売ってはいけないなぁ・・・作ってはいけないなぁ・・・などと、いつも思っていました。

ところが、とある鑑定士の方の本を偶然に読む機会がありましたが、昔はプロ同士の売買で、ニセモノが横行していたらしい事を知り、驚愕しました。

当時の彼らのロジックでは、騙すよりも、騙された方が、プロとして未熟者であり、恥ずかしいことなのだそうです。プロの矜持として、ニセモノには手を染めない、などという純な世界ではないようなのです。

うっかり、プロつかんだニセモノを、他のプロに本物とごまかして売りつけて損害回収するぐらいは当然のこと、なかには自分の倉庫にあるハンパ物を組み合わせてニセモノを作り、本物として売りつける事もあったのだそうです。そのニセモノも、本物として数人の手を渡れば・・・やがて本当の本物と呼ばれる日が来る!?とか。

また、本物とニセモノの違いも、いつも科学的根拠、あるいは理路整然とした理由があるわけではなく、自分の直感、美的感覚だけの根拠で真贋を決める場合もあるのだそうです。

主人公のヴァージルも優秀な鑑定士ですが、ご多分に漏れず、そんなところもありました。

そんな彼の趣味は美人画の収集です。一般論として、なにかのマニアというのは、満たされない異性への愛情を埋めるための代償行動、である場合がありますが、今回は、そのまんま美人画の収集ですので、とても分かりやすいです。

見方によれば、その美人画をニセモノの愛情(ハニートラップ)とうっかり交換してしまった感もあるのです。

彼は警察へ訴えようとしてやめました。Hまでしていたからです。Hからは複数の意味づけが可能でしょう。愛した女を犯罪者にはしたくなかったのかもしれない。そこに彼女からの真実の愛を感じたのかもしれない。でも、単純に前段の骨董商のロジックを使えば、すでに彼女はHで支払いを済ませた。それに、騙すより騙された方が悪いのです。プロとして恥ずべき事だったのです。

この映画は悲劇には違いありませんが、ある意味プロ同士の抗争劇であり、どっちにしろ、私など素人(カタギ)には別世界の話しでした。

言い忘れましたが、マニアが○○の代償行動だと気づかぬうちは良いですが、その○○の正体に気づいてしまったら、そして今回のごとく、一度でもその○○を手に入れてしまったら、もう、代償行動では満足できなくなってしまうのでしょう。それこそは哀しいですね。

骨董品には古い「気」(気功などで言うところの「気」)や「魂」が宿っているのかもしれません。これは幽閉された古今東西の美人画に宿るものが、人間を動かして起こした奇跡の脱出劇だったのかもしれません。美人画コレクション=引きこもり美女、として対称的構造になっています。だから、美女が逃げた時、コレクションも消滅しなければなりません。

私は映画パンフを買いませんので知りませんが、ウワサではどうもラストはハッピーエンドらしいのです。彼女と再会を果たすらしい。もし、そうだとしたら、私の知っている実人生と比較し、甘すぎる。完璧にリアルさが足りませんが、上質な作りだったので★ひとつオマケです。

★★★★



(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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