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#ネタバレ 映画「LION/ライオン ~25年目のただいま~」

「LION/ライオン ~25年目のただいま~」
2016年作品
インド人が0を見つけた
2017/4/12 14:57 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

劇場入口の壁に何かぶら下げてありました。「?」と思って見ると箱入りティッシュペーパー。

そんなところにティッシュペーパーが有るのを初めて見ました。なんのために。清掃する従業員さんのため?、もしや哀しい映画なのにハンカチを忘れたお客さんのため?。まるで「入場券を買ったからには覚悟するのだよ!(ふふ)」のサインを見たような嬉しい気分です。

案の定、映画の終わりには泣けてしまいました。私はハンカチ持参派なのでOKですが、出る時には、あそこにティッシュペーパーがあることはすっかり忘れていました。

たぶん映画館の中と外は、この世と、あの世ほど違う異世界なので、トンネルをくぐった瞬間、記憶が飛んでしまったのでしょう。

母を尋ねて何千里、みたいな映画ですが、映像もきれいだし、ていねいに作られていて好感が持てました。

★★★★★

追記 ( インド人が0を見つけた ) 
2017/4/12 18:16 by さくらんぼ

5歳のインド人・サルーが好きだった揚げパンみたいな菓子は〇の形をしていました。

映画の前半には家族とはぐれた(家族が0になった)、サルーの悲しみが描かれています。

チラシに「線路を歩いているサルー」が写っています。彼が脇に抱えているのは折り曲げた段ボール。あれは昨夜、同年代の見知らぬ少年からプレゼントされた空きベッド「0」なのです。

グーグルアースに現れた地球は当然に〇です。

列車の速度と乗車時間で家までの距離が推定できます。それで同心円を書いて、その範囲を調べるのです。同心円は〇です。

調べたポイントに虫ピンをさしました。虫ピンを上から見ると〇です。

サルーが買ったサインペンは面白い形で、三センチごとに切ったソーセージみたいです。三センチごとに分離でき、色違いになっていました。○い断面が際立ちます。

サルーの記憶の中にある家は、給水塔のある駅の近くです。その給水塔を上から見ると〇。

後半には、養父母のために帰国できないサルーの苦しみが描かれています(養子は二人いましたが、もう一人は知恵遅れなのか、情緒不安定で、養父母が老後あまり頼りに出来る存在ではないのです「0」)。サルーは言葉に出来ない養母の気持ちを忖度し、帰ると言いだせないのです。

そんなこんなの終わりに、サルーは給水塔を見つけます。

追記Ⅱ ( 「イマジン」 ) 
2017/4/14 9:14 by さくらんぼ

映画の後半、青年になったサルーは、二つの祖国、二つの家族の間に立って、リーダーとしての身の施し方を考えます。この映画の泣きのポイントはいくつもありますが、私はそこに注目しました。

世に移民や難民の問題があります。

人々は問題が起こらないようにと、国境や壁を作るのだけれど、ほんとうは国境や壁を作るから問題が起こるのではないのか。サルー(本来の意味はライオン)の、苦悩する姿は、ふと、そんな(現実的とは思えない)夢想もさせてくれたのです。

あの名曲「イマジン」のような。

追記Ⅲ ( 彼女のタテガミ ) 
2017/4/14 22:24 by さくらんぼ

毛糸の帽子とマフラーを身につけてサルーに抱きついている彼女。あの帽子とマフラーは雄ライオンのタテガミの記号なのでは。

つまり彼女の方が男性、逆にタテガミのないサルーは女性のつもりなのかも。そう思って観ると子ども時代から、サルーには微妙に女性っぽい演出もありました。

それに、怪しい男女にサルーが売り飛ばされそうになるシーンがありましたが、あれなど女性の設定なら、より理解しやすいです。

これも、邦画にもときどき見かける男女が逆転している作風なのかもしれません。LGBTQな時代を反映してなのか、より多くの共感を得るためなのか。

私は男がサルーと二人でベッドに横になり、色目を使うシーンでそう思いました。あそこで逃げだしたサルーの直感はすごいです。

たとえ実話でも、映画の多くは現実をモチーフとしたフィクションですから、それも有りです。

追記Ⅳ ( 「サンダーバード」な養親 ) 
2017/4/21 18:26 by さくらんぼ

オーストラリアへ旅行したとき、初めて本物の「南半球版世界地図」を見ました。ご承知のとおり上下が逆転したものですね。

あれを眺めていると、国境紛争も少なそうですし、広い海ひとりじめみたいなオーストラリア人は、ノビノビとした生活を謳歌しているのかもしれないと思いました。裏庭にミサイルがぴゅんぴゅん飛んでくる日本とは違って。

サルーの養親が「子どもは作りたくない。世界には恵まれない子どもが沢山いるから養子をもらえば良い」みたいな人生観を持った背景には、もしかしたら、その「謳歌」が一滴ふくまれているのかな、とも思いました。

つまり「自分だけ幸せになるわけにはいかない」という思想、これが主題のようです。

それはセリフにある通り、青年サルーに宿った思想でもありました。

そして、それは「ノブレス・オブリージュ」にも、つながります。

そこに「ライオン」という言葉も生きてきます。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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