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#ネタバレ 映画「体操しようよ」
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)
「体操しようよ」
2018年作品
「ラジオ体操」という宝物
2018/11/20 9:06 by さくらんぼ
朝日新聞の映画評でしたか、「この映画は細部の演出がすごい」みたいな話が書いてあったので、観に行きました。
確かに、一見TVのホームドラマみたいな話ではありますが、映画「プレイス・イン・ザ・ハート」のように、さり気ない細部で語っているみたいな、気高いところもありました。そして重層的なところも。
とくに仕事をリタイアした方、これからする方は、観ておいて損はないと思います。
和久井映見さんが良い味を出していましたよ。
★★★★
追記 ( 「ラジオ体操」という宝物 )
2018/11/20 9:26 by さくらんぼ
この映画の主人公・佐野(草刈正雄さん)みたいに、38年間無遅刻無欠勤で定年まで勤め上げた人の中には、会社が人生のすべてであり、リタイアしたら、無に帰ってしまう人もいるでしょう。
それは定年退職した人だけではありません。体操会のマドンナ・のぞみ(和久井映見さん)みたいに、何かトラブルがあって、居場所を追われ、流れ着いた人にとっても。
でも、その街に、たとえば「ラジオ体操会」があれば、参加させてもらうことによって、自然と新たな人間関係が広がって行くものらしいのです。体操が、体操に留まらず、人生再生の足掛かりになって行くのです。
追記Ⅱ ( 「平成」の終わりに )
2018/11/20 9:51 by さくらんぼ
そして、この映画の深層には、平成の終わりである今公開される、理由があるのでしょう。
映画「PARKS」に出てきた昭和天皇に似た少年が、この映画「体操しようよ」にも出てきます。
「 猪熊は1927年8月、簡易保険局の会議において昭和天皇即位を祝う事業としてラジオ体操を提案[5]。
1928年5月24日に簡易保険局、日本生命保険会社協会、日本放送協会の三者が体操の考案を文部省に委嘱した[6]。文部省では体育課長の北豊吉を委員長とし、体育研究所技師の大谷武一などを委員として検討を重ね[7]、10月29日に「国民保健体操」の名称で発表、同年11月1日7:00に天皇の御大典記念事業の一環として東京中央放送局で放送を開始した。
同局で放送を担当したのはラジオ体操のために採用された元軍人(軍楽隊学長)の江木理一アナウンサー[8]。彼は初回からブリーフパンツ1枚でマイク前で体操していたのであるが「照宮成子内親王もラジオ体操に御執心なり」と聞き及ぶや濃燕尾服に蝶ネクタイを締め、正装に身を包んだ上で放送に臨むようになった。実際の振り付けは郵便局員が全国に周知した。 」
( ウィキペディア「ラジオ体操」概要より抜粋 )
追記Ⅲ ( 第二の人生は好きな事をしたい )
2018/11/20 10:17 by さくらんぼ
昔は、「仕事つらいもの、だから我慢の対価として、給料をもらう」みたいな人生観がありました。NHK朝ドラを観ても分かりますが、戦後は食っていくのが精いっぱいで、仕事を選んでいる余裕はなかったのです。だから、そこから生まれた人生観だったのでしょう。
しかし昨今、若者を中心に、「好きな事、楽しめる事を仕事にしよう」という考えに変わってきました。時代背景として、それが可能な、良い時代になったこともあるのでしょう。
ところで、この映画の主人公・佐野は、リタイア後、ひょんな事から引き受けた仕事が面白くないため、転職したいと申し出ると、「そんな事を言っていてはいけない」と、(フラフラしている)息子のような先輩から説教されるのです。だから辞められませんでした。
なにか立場が逆転していますし、第一、38年間無遅刻無欠勤で、我慢の宮勤めをしてきたのに、第二の人生で好きな事をするのが許されないなんて…そう思いました。
追記Ⅳ ( 「世間知らず」の主人公 )
2018/11/20 14:28 by さくらんぼ
立派なキャリアを持っている人に起こりがちですが、無自覚だと、第二の人生では、張り切り過ぎてトラブルを起こしてしまうことがあるのです。
主人公・佐野は、皆の体操を上手にしたいと、手作りのマニュアルを配布し、自らも口頭で指導に回りました。
しかし、ここの参加者は「参加すること自体に意義」が在って、休もうが、遅刻しようが、下手であろが、他の人に迷惑をかけなければ良いのです。その「ゆるさ」が集客・運営の秘訣でした。ここは会社ではありませんから。
追記Ⅴ ( 代替わり )
2018/11/20 14:38 by さくらんぼ
どのラジオ体操会にも、そこのボスがいるようです。マドンナもいて、目に見えぬ人間関係もあるのでしょう。
やがてボスも引退し、代替わりが起こります。政治政策や、力関係も変わることがあるかもしれません。
日本の天皇制も、長い歴史の中には、色々な事があったのでしょう。来年の生前退位もその一つですし。
追記Ⅵ ( 意外と大事なこと )
2018/11/20 18:08 by さくらんぼ
学校のクラブでも、民間のクラブでも、参加者には「①選手なって試合で勝ちたい人と、②レクリエーションとして楽しみたい人がいる」わけです。
だから、場合によっては2グループに分けて、リーダーは、①の人には選手としての指導を、②の人には(うるさいことを言わず)自由にしてもらうような、配慮が必要になります。
余談ですが、スポーツではなく、仕事の、いわゆる「天下り」みたいな職場でも、軽々に自分流を発揮してはいけないみたいです。社風が違う事がありますから。
追記Ⅶ ( 「ラジオ体操」という茶室 )
2018/11/20 18:19 by さくらんぼ
映画の中で、樹木希林さん扮するお師匠さんが言っていました。
「 世の中は変わるわ、いろんな事が起こる。時には大変なことも。でもね、ここは変わらない(茶室の事)。だから、何かあっても、ここに戻ってこられて、静かにお茶を飲めるというのは、本当は、とても幸せな事かもしれないわね…」と。( 映画「日日是好日」の私のレビュー追記Ⅶより抜粋 )
あたらしい朝の光の中で行う、ラジオ体操もまた、茶道に通じるものが在るのでしょう。
追記Ⅷ ( 縮図 )
2018/11/20 21:42 by さくらんぼ
>映画「PARKS」に出てきた昭和天皇に似た少年が、この映画「体操しようよ」にも出てきます。(追記Ⅱより)
もしかしたらですが、もしかしたら、いつも海辺で行っているこの体操会。これを島国日本の記号だとすれば、リーダーが休むことになったので、急きょ女性がリーダーになるというあらすじは、女性天皇の賛成・容認の記号だったのかもしれません。
彼女の名はのぞみ(和久井映見さん)。
品格もあり、メンバーが争っても誰も切り捨てず、「私はみんなで体操がしたい」というセリフも、女帝っぽくて意味深ですし、彼女が血縁関係にあり、「関係を大切にしたい」と言っているのが、昭和天皇に良く似た少年なのです。
追記Ⅸ ( リーダーの弱音 )
2018/11/21 22:09 by さくらんぼ
>主人公・佐野は、皆の体操を上手にしたいと、手作りのマニュアルを配布し、自らも口頭で指導に回りました。
こうなったのは、ラジオ体操会の新リーダーになったヒロイン・のぞみが、「私には出来ないわ」と弱音を吐いたからです。
それを聞いた主人公・佐野が、淡い恋心もあって、「大丈夫、僕がお手伝いしますから」と取り入り、結果、会が分裂する大騒ぎになったのです。
彼は主導権を握っておきながら、「でも自分はリーダーではない」というお気楽から、熟考することなしに、突っ走ったのです。既視感のある責任者不在の構図。
善意の助っ人でも、未熟者がフォローするとこうなりました。ましてや、悪意のある者が入ってきたら、それこそ大変。
何を言いたいのかと言えば、「リーダーたる者、うかつに弱音を吐いてはいけない」という事です。
追記Ⅹ ( 「高原へいらっしゃい」 )
2018/11/22 9:29 by さくらんぼ
一般論として、「大企業の論理を中小企業に持ち込むのは難しい」のです。例えそれが正論であっても、中小企業が同じ論理で動いているとは限らないからです。
それどころか、社風に合わなかったり、経営上の障害になったりすると、正論を言う者は煙たがられ、悪人にされてしまうこともあるのです。居づらくなって出て行くのは、その人の方かもしれません。
でも、この辺りの整合性を、上手く取ったような物語がありました。
現在BSでも再放送されている、往年の人気TVドラマ、「高原へいらっしゃい」(1976年オリジナル版)です。大企業のエリート社員だった男が、零細企業とも言える高原のホテル再建と、人生の再生に賭ける話です。このリーダーの話術は必見です。
追記11 ( 体操は全身くまなく )
2019/3/2 9:46 by さくらんぼ
先日、「右脚の付け根」の関節を痛め、階段を登るのも苦痛になってしまいました。
なぜ痛めたのか、特にこれと言ったトラブルの記憶はありません。変わったことと言えば、久しぶりに部屋の掃除をした事と、その時に、背伸びして壁にポスターを貼った事ぐらいです。
これに限らず、歳を取ると、ささいな事で体を故障することがあります。
私とて、運動していないわけではありません。
毎朝、腰の回転運動と、スクワット100回などが日課です。それが済むとレビューなどを書き、何も予定のない日は、5,000歩以上の散歩に出かけます。
最近は少しお休みしていますが、気功で1~1.5時間ぐらい体操をしたり、散歩の代わりに、海外旅行のカバン並みに重たい道具を引きずって、アーチェリーへ出かける日もあります。
それなのに、なぜと思いましたが、特定の運動だけでは、「あまり動かしていない筋肉や関節が残る」のでしょう。それが次第に錆びついていく。
その点ラジオ体操は、「全身くまなくの運動」ですから、錆びつくパーツを減らすことが出来そうです。
ラジオ体操とて、あまり無理して動かし過ぎ、体を痛めたりしてはいけませんが、ほどほどに動かしておくには、理想的な運動だと、あらためて思いました。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)