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レコードプレーヤー「AT-LP60X」を使ってみました

数年前の引っ越し直後に買ったものをやっと開封

新居は狭いし、開封を後回しにしておいたら、数年経ってしまいました。毎日この箱を見て暮らしていましたが、そろそろ出さないと思い、2日がかりでに家財の移動をしたりして、置き場所を作り、なんとかセッティングしました。

このレコードプレーヤーで(今は「ターンテーブル」と言うらしいですが、オーディオ全盛期を過ごした私たちは「レコードプレーヤー」と呼んでしました。当時の常識で「ターンテーブル」とは、「丸い回転台のみの呼称」です)、さっそく、このLPを聴いてみました。

レコードプレーヤーという機械的メカと電子回路が融合した製品は、しかも、数年間眠っていたものは、開封して電源を入れたらすぐにベストな音を出してくれるとは、私には思えません。かなりの時間、エージングが必要だと思います。

さらに、スピーカーで大きな音が鳴らせない状況もありましたので、夏に使う、こぶりなTV用のヘッドフォンで試聴しました。その上で音の感想を言えば、再生周波数レンジはほどほどでしたが、その中で、密度感の高い音を聴かせてくれました。後日、ネットラジオの音とも比較しながら、スピーカーで聴いてみたいと思います。

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ターンテーブルには響きの良いフェルト・マットが付いていた

ターンテーブルはアルミニウム製ですが、その上にあるマットはフェルト製です。昔から多くの製品はゴムマットでしたが、途中から、フェルト製のものもちらほら出て来ました。

ある専門家のお話では、「(レコードの振動音もふくめてレコードの美音なので)ゴムよりもフェルトの方がレコードが振動しやすいから音が良い」のだそうです。私はフェルトは初めてなので興味津々。ちなみに、フェルトと言っても、お習字の時に紙の下に敷くような、ふにゃふにゃなものではありません。糊の付いたカッターシャツのようにパリッとしています。

試しにゴムマットとの比較試聴をしたいと思いましたが、あいにく手元にはありません。その時思ったのですが、フェルトマットが型崩れしないように入っていた丸いダンボールをマット代わりに敷いたら、どんな音になるのでしょうか。想像では、フェルトよりもエッジの立った音になりそうな気も。

追記 2024.10.2 ( 片隅にさり気なく書かれていた言葉 )

意外なことに、「レコードプレーヤーは高級品よりも普及品の方が柔らかな聴きやすい音がする」ようだ

これはオーディオ誌の片隅にさり気なく書かれていた言葉ですが、ライターさんの「本音」だと思いました。一般に、高級品になるほど防振対策も増え、音が鮮明になるからでしょう。「柔らかな音を求めてLPの世界に入ったのに、高級品を求めるほど、CDの音に近づいていくという不条理がある」ことにプロが触れた稀有な記述です。このような記事を見つけることも読書の楽しみ。

私自身、おせいじにも経験豊富だとは言えませんが、ぺなぺなのプラスチック製入門機と、ダイキャスト高剛性ボディの中級機でシンフォニーを聴き比べたら、中級機の方が「鮮明だけど、うるさい音」がしたのを経験しており、自分の好みは入門機系だと思ったことがあります。ちなみに、その中級機シリーズ、評論家も多くは高評価していますが、一度だけ「鮮明だけど、うるさい音」的な評価を読んだことがあり、「やはり、そういう傾向があるんだな」と納得した次第です。

ちなみに、レコードプレーヤーの名門・トーレンスは、オルゴールのメーカーでもあったので、「音は響かせてナンボ」という話に、とりわけ理解を持っているメーカーだと思います。ですから、レコードプレーヤーでも、その他大勢のメーカーとは違った音作りをしているようです。アナログ独得の柔らかさを、さらにデフォルメしてくるような音、それがトーレンスに対して、私の理解しているところです。(2021.11.29のパレット記事に加筆再掲)

追記Ⅱ 2024.10.3 ( PHONO入力か、LINE入力か )

PHONO入力か、LINE入力か、それが問題

オーディオテクニカのHPにある「フルオートターンテーブル【AT-LP60X】セットアップムービー」を拝見すると、「PHONO端子のあるアンプへ接続する場合はPHONO/LINE切替えスイッチをPHONO側へ入れて接続してください。」とありました。この文章を読むと「PHONO端子のあるアンプへ接続する場合は、PHONO端子をお使いください。PHONO端子が優先です。」と言っているように、私には聞えるのです。

しかし、私は「アンプのPHONO端子に接続する場合は、PHONO/LINE切替えスイッチをPHONO側へ入れて接続してください。」、つまり「お好みの方をお使いください。」だと思っています。

PHONOかLINEか、どちらの入力を使うかは、現場に遭遇した人なら両方試した人が多いと思います。私も過去に両方試したことがありました。結果は、確かに音に違いが出ましたが、「(理性ではPHONOの音がhi-fiと感じても、感性ではLINEの音に萌える、みたいに)音の好みは人それぞれ」だと思いました。

フォノイコキットはそのうち作りたい。たぶん、これが一番良い音になるのだろう

又、レコードプレーヤーだけでなく、プリメインアンプにもフォノイコが内蔵されていますが、外部フォノイコのキットも持っていますから、こちらも試したいです。

追記Ⅲ 2024.10.6 ( 続・PHONO入力か、LINE入力か )

当面、このアンプのPHONO入力で、肉付きが良く、ゆったりした音を楽しむことにした

もう少し「①PHONO入力か、②LINE入力か」の話を続けようと思います。この話を続けるには「アンプ(PHONOイコライザー部)のグレード」が問題になりますから、画像をUPしました。

このアンプはレコードプレーヤーと同時期に買ったものです。当時は新品で1.5万円ぐらいだったでしょうか。不思議ですが、自分で部品を集めるだけでも、この値段では難しいでしょう。内容的にはオーディオ全盛期の5万円ぐらいの製品に相当すると思います。

さっそく①で試聴してみました。全体の音の傾向は似ていますが、肉付きが良くなりました。例えばCDプレーヤーはメインアンプに直結しても鳴りますが、それでもプリアンプという余分な回路を通すのはなぜかと言えば、理由の一つには、「肉付きを良くするため」というものがあると思います。それと似たような効果が出ました。文字通り、アナログっぽい音です。

②にすると、少しスッキリした音になります。音の鮮度が少し上がったように聴こえ、細部がより分かるような気がします。①に比べてCDっぽい音とも言えそうです。リズム系の音楽が好きな若者は、こちらの音が好きかもしれません。

とりあえず、当面は①にしておくつもりです。このゆったり感、安心感は好みです。

試しに本当のCDで同じ歌手・松田聖子さんを聴いてみました。CDプレーヤーはデジタルライントランス「DLT-1」を通してアンプに繋いでいます。すると、あらためて「DLT-1」の設計思想が分かるように思いました。音が滑らかになるだけではありません。艶とパンチもあり、LPの音色に似ているのです。②の延長線上にある音とも言えます。

( 一般にトランスを通すと音がなまる(ぼける)傾向がありますが、トランスの使い方によっては、音にパンチを与えることもできるようなのです。そのパンチを効果的に演出できれば、より魅力的に聴こえます〈鮮度感UPにもなる〉。DLT-1にはそんな設計思想があるように思います。)

しかし、そこはCD。LPに似た音色でありながら、CDの鮮度の高さも持っています。「DLT-1」は、(CDファンではなく)LPファンが、やむをえずCDを聴くときには、現在でも重宝すると思います。いつも使っていたのに「DLT-1」の音に感動したのは、20代の頃に電気店で試聴させてもらった時以来です。

追記Ⅳ 2024.10.6 ( 派手目な音は良く聴こえる!? )

このアンプ、値段の割に音が良いと、評判の高い物です。私はと言えば、高級アンプを買うまでの繋ぎで買ったのに、気に入ってしまい、高級アンプは買わずじまいになりました。似たような話がアマゾンの英語のレビューにもありましたので、どこの国の人も似たようなものだと苦笑しました。

実は、低価格の商品の方が音が良いというのは、CDプレーヤーでも経験していますので、わりとある事例なのでしょう。その理由を考えましたが、「低価格商品の方が、概して元気な音作りをしているせい」なのかもしれません。周波数帯域が狭い(重低音が少なめだ)と軽快な音になりますし、低価格アンプは音の質感も粗削り(刺激的)なところがあるかもしれません。又、周波数特性をいじって、低音と高音を微妙に持ち上げたりして、派手目な音作りをしていたりするのです。

通常、トーンコントロール部は、余分な回路でもありますから、音声信号が濁ると言われます。ですから、多くのアンプにはトーンコントロール部をパスするダイレクトスイッチがついています。しかし、これをON(ダイレクト)にすると、確かに鮮度はUPしますが、同時に音痩せして、線が細くなり、色気のない音になりがちです。

しかし、OFF(トーンコントロール回路を通る)にすると、音がボケたのが分かり、「hi-fiから遠ざかった」と、これも意気消沈してしまいます。

でも、写真のアンプは、OFF状態で、トーンコントロールはフラットなままにしても、秘めた音作りで、OFFにしてもあまりボケた感じがせず、それどころか、元気が良くなったように聴こえる不思議な製品なのです(もしかしたら、他社製品にも似たものがあるかもしれません)。

しかし、ここで周波数特性を変にいじってしまい、そこが目立ちすぎると、耳障りになってしまう事がありますが、この製品は、それをあまり感じさせないので、よほど耳の良い設計者によってチューニングされたのだと思います。レビューを読むと、時どき「高級アンプよりも音が良い」と評価されていますが、その理由の一部も、このような「元気の良さ」なのかもしれないと思っています。

追記Ⅴ 2024.10.7 ( アンプの話をもう少し )

「気に入った音に出会えたら、浮気をせずに、使い続けた方が良い」。それは恋愛の代償行動なのだから

「1.5万円のアンプが気に入ったために、高級アンプは買わずじまい」と書きました。しかし、それ以前に高級アンプをまったく買った経験が無いわけではないので、今回はそのお話します。

当時は5万円ぐらいのトランジスタアンプを使っており、とても気に入っていました。今までのベストだと言っても良いでしょう。

しかし、一生モノのつもりで大きな高級スピーカーを買ったのに合わせ、それにバランスする一生モノの高級アンプを店員さんと相談して買ったのです。定価17万円ぐらいでした。実は、一生モノですからその兄貴分である28万円ぐらいの方が良かったのですか、28万円の方はトーンコントロールが付いていなかったので敬遠したのです。(音を濁らせるトーンコントロールは付けない)当時の高級品にはそんな傾向がありました。

後に友人が28万円を買ったので試聴せてもらいましたが、組み合わせるスピーカーとの相性が悪かったのか、高音がうるさ過ぎて困惑していました。トーンコントロールが無いと、こんな時に途方にくれます。

話を17万円の方に戻します。意外ですが、買ってきたその日に、音が気に入らなくて落胆したのです。息が詰まりそうになるほど鈍重な音に聴こえたからです。本当はレゲエが聴きたいのに、バッハの無伴奏チェロ組曲を聴かされたみたい。「そんなもの、ショップで聴けばわかるだろ」と思うかもしれませんが、意外と店頭では分からないものです。試聴環境も、メンタルの状況も違うからです。その為、ショップによっては上得意様になると貸出試聴をさせてくれる事もあるとか。一晩でも一緒にすごせば随分と理解し合えると思います。

私の話に戻します。しかし、気に入らぬからと言って、すぐに買い替えるわけにもいかず、以後、10年ぐらい鬱々と使うことになります。何年もの使いこなしと、耳の慣れで、機器との妥協点を見つけようとするのも、この道楽の一つの姿だと思います。

それまで使っていた、手放してしまった5万円のアンプと何が違うのかと言えば、5万円の方はもっと明るい音でしたし、鏡面を思わせるような、艶やかで、寒色系というかクールな音色でしたが、17万円の方は木肌を思わせるような艶消しで、暖色系の音色だったのです。音の粒子感も大きく感じました。私の共感覚!?では、お薬の「龍角散」のパウダーが見えるのです。あんな質感が。真空管アンプの音の質感が液体なら、17万円の音は「龍角散」のように崩れやすい個体でした。

そうそう、一部のヨーロッパのアンプを意識してか、高級機だというのに、高域がしゃくれ上がっていて、それが、一緒に買ったスピーカーの欠点を増幅して嫌でした。トーンコントロールで下げても、基本的な周波数特性の癖が消えるわけではないと思い、ため息をつきました。

時が流れ、この17万円のアンプを手放す時がやってきました。今度は同クラス以上の高級アンプに買い替えたいです。真空管アンプに鞍替えしても良いかもしれません。ですから、ここは慎重にならなければなりません。同じ間違いをせぬように。商品選びにはじっくり時間をかけるつもりでした。なので、その間の繋ぎとして、1.2万円のアンプを買ったのです(1.2万円のアンプは、わけあって、数年後には2代目に買い替えることになります。1.5万円に値上がりしていました)。

そうしたら、1.2万円のアンプは、昔使っていた5万円ぐらいのアンプ再来かと思うぐらい気に入りました(別メーカーですが)。

その後、オーディオ誌等を読むと、アンプは概ね、入門機ほど元気な音がして、高級機ほどおとなしい音になるようです。入門機を買った人が、もっときめの細かい音が欲しいと思って高級機を買うと、きめが細かくなっても、大人しい音になってしまうとか、私のようにきめも粗くなってしまうとかして、期待外れになることがあるようです。

スピーカーなどに比べて、アンプの音質の差は分かりにくいものです。だから、「アンプを買い替えるなら価格にして2倍は出さないと違いが実感しにくい」というのがオーディオ界の常識の様でしたが、そんな価格論とは違う問題があることを知りました。一般庶民が上流階級の世界に入っても幸せになるとは限らないのです。

同じ失望感をCDプレーヤーのグレードアップでも体験しました。

そんな私が得た教訓では、「気に入った音に出会えたら、浮気をせずに、使い続けた方が良い」というものです。それは恋愛の代償行動なのだから。

「たわむれに浮気をすると、浮気相手の良さも分かるから、最高だと思っていた自分の製品が色あせて見え、かと言って、浮気相手のすべてが最高だとも思えず、居場所を失って、路頭に迷うことになりかねない」のです。

書き忘れましたが、この17万円のアンプのフォノイコ部に、当時持っていた別メーカーの1万円ほどの安いレコードプレーヤーを繋いだ音は、周波数レンジが広がって、レコードプレーヤー内蔵フォノイコの音よりも、ワンランク上になりました。しかし、低音が出るようになると、音の軽快感が減って聴こえるので、レコードプレーヤー内蔵フォノイコの方が好みでした。

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(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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