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#ネタバレ 映画「君は行く先を知らない」

「君は行く先を知らない」
2021年 イラン
2023.8.27

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

三菱のパジェロだったでしょうか。

借り物のクルマで荒野を旅する、ある家族の物語です。

荒野だから、信頼の日本車が良いのかな。

上映時間93分。

しかし、ドラマは濃厚でも、なぜか2時間30分程度の作品のように感じました。

大きなトラブルも起きません。

私が眠っていたのでなければ、旅の目的も語られていません。

行間で観る者が察するしかないのです。

私はイラン映画が好きで、機会があれば観ていました。期待通りの作品です。

先ほど荒野と言いましたが、日本では荒野は少ないと思うので、イラン映画ファンなら、イランの荒野だけでも楽しめるものです。

しかし、世界には、このような旅も少なくないのでしょうね。

そういう意味では、一回観て、自分なりに旅の目的を想像してから、二回目を観ると、味わいが違って来るのかもしれません。

(追記) 2023.8.27 ( 旅立ちの詩 )

ぼんやりと最後近くまで観ていると、丘の向こうから、布袋で顔を隠した男が一人、バイクでやってきます。

顔を隠している時点で怪しいですし、態度も横柄です。

私は最初、家族の20歳前後の息子が、反政府組織にでも入隊するのかと思いました。民兵になるのかと。

しかし、チラシのSTORYには「イランの国境近く。・・・」(抜粋)とありましたので、原題「Hit the Road」も加味して考えると、国外脱出なのかと思い直しました。

ならば、あのバイクの男は、逃がし屋なのでしょう。

家族は大金が必要なはず。

そして、息子にはもう一生会えないかもしれない。

しかし、家族は息子の将来のために、息子は自分の未来のために、決心したのでしょう。

沈痛な面持ちの家族とは違い、終始騒いでいた幼い次男は、旅の目的を知らされてはいません。

しかし、家族の言う事も聞かないぐらい自由に動き回りますので、あの子も、やがて国外脱出するのでしょう。

老いた家族だけが残されていきます。 

(追記Ⅱ) 2023.8.27 ( 映画「プリシラ」 )

後半、ふと映画「プリシラ」を連想しました。するとLGBTの要素もあるのでしょうか。オマージュかも含めて、現段階では分かりません。

(追記Ⅲ) 2023.8.31 ( LGBTが国際結婚するお話だったのか )

「 イランでは同性愛は犯罪行為であり、被疑者が同性愛の事実を認めた場合は死刑を含む刑罰で罰せられる。」

( Wikipedia「イランにおける同性愛者迫害」マスメディアにおける見解より 抜粋 )

父親が片脚を折ったようで、白いギブスをしています。なぜでしょう。一般論として、男性が女性の脚に魅力を感じるのは、脚が男根の記号だからと、どこかで読んだことがあります。これは、国外脱出する息子がLGBTの場合には、周辺を飾る性的記号として符合すると思います。

父と息子はリンゴを分け合いました。エデンの園からの追放でしょうか。

そう言えば、国外脱出しようというのに、イランらしく髭を生やした息子ですが、細身で、女性的なやわらかい空気をまとっています。

末っ子には、両親は、兄が旅立つ理由は「結婚」だと言いました。LGBTならば結婚は本当の理由なのでしょう。イランでは死刑になりかねない重罪のようですから。母の、末っ子には「嘘ばかり教えて来た」というセリフの意味は、子どもには、イランではLGBTだとは言えないという事でしょうか。

そして、自分の真実の姿を見せるために、荒野を通って旅立つというストーリーは、映画「プリシラ」と符合します。

音楽がどこに出て来るのかと言えば、映画の前半に、ギブスにピアノの絵を書いて、演奏を楽しむ末っ子がいました。性的なにおいと音楽の饗宴です。

この映画「君は行く先を知らない」は、LGBTの兄が、結婚もできるようにと、国外脱出をするお話だったのでしょう。



(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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