#ネタバレ 映画 「少年H」
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
「少年H 」
「集団ヒステリー」あるいは「裸の王様」
2013-10-06 18:10byさくらんぼ
映画「禁じられた遊び」は、戦争になると、最前線の兵士が戦死するだけでなく、遠く離れたところに住む民間人も、罪のない子供たちにも、不幸が訪れる、という事を描いていました。遠隔悲劇ですね。あのラストは、何度観ても、やるせなくなります。
そして、この映画「少年H」も少し似ているのですね。
映画「少年H」では、少年の父・盛夫は兵役検査で不合格になり、兵役につく事も無く、当時としては、幸せな生活をしながら、神戸にいました。
でも、戦火はここまでやってくるのですね。爆撃機からの爆弾、焼夷弾により、神戸も焼け野原にされてしまいます。さらに、敵国からだけではなく、日本の警察や、憲兵など、本来、味方である組織からも、誤解され、眼の敵にされて追い回され、拷問まで受けるのです。
それを、避けるために、人々は、口を閉ざし、やりたくもない仮面を被って、目立つ個性を殺し、生きる事になります。ここが主題でしょう。
身の安全のため、最終的には、極度に単純化されたた、敵味方だけの、白黒碁石の様な世界の住人、として生きる事になるのです。
言論の自由と、個性の否定は、ある意味、個人の死、と同じであります。オトコ姉ちゃんの悲劇が代表的な記号ですね。そして盛夫も・・・。
これは、もちろん戦争の悲劇を描いていますが・・・映画が現在の日本を映し出した鏡だとすると・・・現在の自由な日本にも同様な事があるのでしょうか。
そう思って、しばし考えてみると、あれが、そうかな、と、思い当たる事があって、愕然とするのです。
私たちは普段、日本は自由だと思い込んでいて、私たちは、いつも自由意志で考えていると、信じていますが、いつのまにか、知らないうちに、誰かに情報操作されてはいないでしょうか。これは、ある意味シャマラン監督の 映画「サイン」にも似ています。
私たちは言論の自由を持っていますが、あのニュースに、異論を唱える事が、いつのまにか、タブーになってはいないでしょうか。
もっと具体的にはっきりと言う勇気は、今の私にもありません、と書いて、ハッと気づきましたが、「言えない」という空気を感じている事自体が、監督が問題視している事、そのもの、なのでしょう。
映画のチラシにはいっぱいルビがふってあり、やさしく読めます。この映画もルビがふったような映画だと聞いたことがあります。しかし、これは隠れみので、本当は、盛夫の様に沈黙せざるを得ないほどの、強烈なスパイスが効いていたのかもしれません。
死に体になってしまった父の代わりに、フェニックスになった少年H。こんなときは、王様は裸だと言った、無邪気な子供、それに小生意気なぐらいの少年が頼もしい。分別のある大人ではなく。
★★★★
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