ネタバレ 映画「あの日のオルガン」
「あの日のオルガン」
2018年作品
カメオのブローチ
2019/2/26 9:22 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
どなたが出ているのか、主役なのかも知らずに、昭和色に惹かれて、飛びこみで観ました。
主役をしていた戸田恵梨香さんは、従来から優れた演技派だと思っていましたが、失礼ながら、今回初めて、実力派の映画スターだったと気づきました。
彼女が主役をしているなら、つまらぬわけはないと、そう思わせるだけのオーラを感じて。
舞台のほとんどは、周囲に田んぼが広がる、古い山寺。それがまた郷愁をさそって良い作品でした。
★★★★
追記 ( 見え隠れするDV事件 )
2019/2/26 10:09 by さくらんぼ
「 53人の子どもの笑顔を守る。それが、わたしたちの使命だった。」
( チラシのキャッチコピーより )
映画は、戦火を逃れての、疎開の話ですが、今、この映画が生まれた時代背景を考えると、そこには、やはりDVによる哀しい事件があるのだと思います。
保母さんたちは、周囲の無理解の中、子どもと離れたくない親たちを説得し、自らの都合も後回しにして、戦火という暴力から、全力で子どもたちを保護したのです。
追記Ⅱ ( 映画「戦場のピアニスト」 )
2019/2/26 10:19 by さくらんぼ
映画「あの日のオルガン」からは、映画「戦場のピアニスト」も連想します。オマージュかは、今は分かりませんが。
以下、映画「戦場のピアニスト」のネタばれです。
『 例えば「戦場のピアニスト」では廃墟を前に立ち尽くすピアニストとピアノ演奏中の2枚の写真だった。私はときどきあの写真を思い出していたのだが、こんな声が聞こえてきた。「すべてが破壊されて何も無くなってしまったとき、人は何を求めるのか。それは肉体の糧である食料と、精神の糧である芸術である」と。 』
( 映画「戦場のピアニスト」 私のレビューより抜粋 )
追記Ⅲ ( カメオのブローチ )
2019/2/26 22:42 by さくらんぼ
チラシの上部に「保母さん二人の写真」が載っています。戸田恵梨香さんと大原櫻子さんです。
劇中、終わり近くに、戸田さんが別の保母さんに内緒話をします。「私、いくつに見える?」と。そして耳打ちするのです。少し驚く保母さん。戸田さんは続けます。「だから、怒ることしか出来なかったのよ」と。
確かに、リーダーである戸田さんは、厳しい鬼の上司で、特に、子どもっぽい大原さんにはよく怒っていました。
戸田さんの年齢はいくつだったのでしょうか。
私は、幼い大原さんと同い年だったのかもしれない、と思いました。
若年のリーダーなのです。
だから、部下から「なめられない」ために虚勢を張っていたのです。実際そのような上司はいます。
さらに、自分と同い年なのに、とても子供っぽい大原さんを、生理的にも黙認することは出来ず、「早く私に追いつきなさい!」とばかりに、叱咤激励していたのだと思います。
しかし、戸田さんとて、若き乙女です。大原さんのような弱さもたくさん持っています。それをラストの号泣が物語っていました。
それなのに、仕事の責任感で、「お面をかぶっていた」わけです。
つまり「かくれていた」。
時に人はかくれるのです。
この「かくれる」という記号は、防空壕や疎開、葉っぱのお布団。かくれんぼや、子どもたちの「おねしょの我慢」などにもつながりますし、戸田さんがいつも胸につけていた「カメオの、白いお面をかぶったようなブローチ」にも、つながっていたのです。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)