EV化と同じくらいヤバイ騒音規制の話
100年に1度の変革
いま、自動車業界は「100年に1度の変革期」にいるらしい。
電気自動車(EV)の急速な普及、自動運転の進歩、マルチマテリアルボディ…
確かに自動車の姿は大きく変わり、数年前には信じられなかったような先進的な車が世に出回るようになった。
その中でも一番ホットなのは、世界規模で進む急速なEV化だろう。2021年に世界で売れたEVは、前年比2.2倍の660万台に上る。
エンジンとモーターを組み合わせるハイブリッド(HV)車をメインにしてきた日本の自動車メーカーは、慌ててEVシフトをしている真っ最中で、多くの人がその結末を知りたがっている。
しかし、もはやラストシーンを迎えつつあるもう一つの物語があるのを知っているだろうか。
それが自動車に対する「騒音規制」である。
軽自動車が消える?
騒音規制は、国連欧州経済委員会が決めた「協定規則第51号(UN_R51-03)」に準じたもので「フェーズ2」と呼ばれる。
一般的な車は「M1」カテゴリーに入り、最高出力 (kW)/ 車両質量(kg)が120以下なら時速50キロの時に70dB(デシベル)以下、121~160以下は71dB、160超えは73dB、200を超えかつ4人乗り以下で座席が低いスポーツカータイプだと74dBを下回らないといけない。
この数値はかなり厳しいもので、サウンド重視のスポーツカーやパワーがなくエンジンの回転が上がってしまう軽自動車はクリアが厳しい。
すでに販売終了に追い込まれたクルマもある。
しかし今のところは、規制の適用前(2020年以前)に発売された車が多いため、お咎めなしで済んでいることも多いようだ。
フェーズ3へ
自動車メーカーが対応に苦慮する中で、早ければ今年後半にもさらに強化された「フェーズ3」の採用が噂されている。
この基準だとHVやEVでないとクリアが難しいのではないかともいわれており、今後発売される新車は「騒音」対策にいっそう苦労することになる。
音だけでなく、衝突試験や燃費基準も厳しくなり、その対策費用がのっかった昨今のクルマは値上がりを続けている。ユーザーにとっては悪い知らせである。
仕方ないのか
本当に必要なら仕方ないと思えるが、あなたは最近のクルマに「騒音」を感じるだろうか。むしろ静かすぎて気づかないことのほうが多いと思う。
また、クルマの排気音がうるさいというより、舗装の悪い道路が引き起こすロードノイズのほうがうるさかったりする。
舗装工事や遮音壁の追加が有効かもしれない。それを全部クルマの責任にしてメーカーやユーザーの負担を必要以上に増やすなら、規制すべきは騒音規制そのものな気もしてくる。
あるいは静かなHVやEVをはやく普及させたいが故の策略だろうか?
ならば正々堂々普及させてほしいものである。
日本は自動車産業を守るべき
世界一の自動車メーカーを抱え、550万人が自動車業界にかかわるこの国で、しかし自動車業界はさして優遇されていない。
免許を持つ人は減り、販売台数の減少に嫌気がさしたメーカーは外国に軸足を移してしまった。車を持っても、多くの税金や高いガソリンに溶けていく札束が人々の元気を奪っている。
過度な規制ではなく、自動車業界を守る姿勢を。
過度な騒音規制が、自動車業界の騒音とならないことを祈って。
参考資料
スポーツカーにとどめを刺す騒音規制 「フェーズ3」いよいよ施行と深刻な副作用 - 自動車情報誌「ベストカー」 (bestcarweb.jp)
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