Titleの辻山良雄さんによる「ラジオ深夜便」でのご紹介
少し前になりますが、5/19(日)23時〜NHKラジオ深夜便「本の国から」のコーナーで、荻窪の書店「Title」辻山良雄さんが、『元気じゃないけど、悪くない』(ミシマ社)をご紹介くださったんです。
他2冊は『ISSUE 中川李枝子 冒険のはじまり』、森田真生著『センス・オブ・ワンダー』。
こんなすばらしい本たちと一緒に……。
まずこんなふうに本の概要を紹介くださいました。
そこから、辻山さんの落ち着いた声で、時間の流れを軸に、心の緊急事態、変化の鍵となる師の言葉「わたしの身体は頭がいい」、オープンダイアローグという対話の手法、人との関わり方、キックボクシング。
大きな窓の部屋や、家族の関係、お酒との関わり、愛猫との別れ……ほとんどの要素に触れていただいた気がします。
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とりわけ深く届いてきた言葉の一部を、書き留めたいと思います(ラジオは「流れる声」が魅力なので、いささか無粋ではありますが……)。
うわあ、ほんとそうだな。
氷山の一角しか実は見えていない(自分で意識していない)。
これは、まさにこの本に書いた時期に、大きな命題として自分にあったような感覚があります。
「見えるんじゃないか」「ぜんぶ知ってるはずなんじゃないか」ともがいていたような気がするんです。
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また、辻山さんが触れてくださった印象的なことの一つに、“不調になる前のわたしと、その後、現在のわたしが「地続き」であること”もありました。
なぜ、この本では「不調になるまでのこと」も、分量として多めに書かれているのかという理由です。
わたしはわたしで変わらない。過去のわたしと今現在、これからのわたしは地続きである。
このことは、強く強く感じていることでもあります。
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まだまだあるのですが、あとここの部分だけ。
わたし自身、この本が「回復の物語」を書いたとは感じていません。
むしろ「回復」とは違うんじゃないか、と考えています。
でも行動は変わるとわたしが生きているたった今の現実は変わる。
自分は変わらないけど、なにかが確かに変わる。たった今が。
人生はやり直せないけど、生活は立て直すことができるのかもしれない。
鷲田清一先生が朝日新聞「折々のことば」で触れてくださったことにも共通して、辻山さんの言葉で留めてくださった気がします。
辻山さんもまさにそのことを感じてくださったんだなと、言葉を受け取りながら感激しました。ふるふる。
そんなふうに、自分で書いたものなんだけど、「そうそう、そういうことが言いたかったんです」といくつも付箋をつけたくなったような、ラジオの時間でした。嗚呼。
本当にありがとうございました。
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いささか長い余談:
辻山さんが、冒頭でわたしの過去の著書についても紹介くださったんですね。
大阪にある淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院の「リクエスト食」を取材した『人生最後のご馳走』(幻冬舎文庫)。
性暴力や障害者差別といった社会問題を自分ごととして捉えた『ほんのちょっと当事者』(ミシマ社)。
『人生最後のご馳走』は、実はとても個人的なご縁が辻山さんとわたしにはあって、それは二人が意図したことではなく、「たまたま」だったんです。
詳細はあえて書きませんが、この本が辻山さんと知り合う最初のきっかけになったことが、わたしにはとてもありがたく、特別な気持ちです。この本を手に取ると思い出す人がいて、同時に辻山さんも思い出す。そういう感じで。
ものすごく曖昧な書き方で恐縮ですが、わたしには特別なことなのでやっぱり書いておきたいと思いました。
また、『ほんのちょっと当事者』は2019年12月、刊行してすぐの頃にTitleさんでトークイベントを開催いただいたんです。
いうなれば「めちゃ元気!」なわたしを辻山さんはそのときにもきっとご覧になっていて、今回の「元気じゃないけど〜」をお読もいただいた。そういうまさに「地続き」なご縁が、とてもとてもありがたいのでした。ほんとまぢ、感謝しかありません。