送球って大事だねというお話(後編)
著:原島(監督) 編集:梅村(部長)
皆様こんにちは。
最近ぎっくり首になりかけました監督です。きっかけはくしゃみとかいうアホみたいなことだから認めたくないのですが、病名を調べると「急性頚椎捻挫症」と呼ぶらしいですね。マジモンの怪我じゃないか…。
それからは、くしゃみが出そうになる度にぎっくり首のことが頭に浮かびます。これからぎっくり首に悩まされながら生きていくことに少し絶望しています。
では今回もよろしくお願いいたします。
本章に入る前に前回のまとめです。失策を捕球ミスと送球ミスの2つに分類してみた
MLBでは捕球ミスと送球ミスの比率が7:3
高校野球(対象は今年の甲子園の全試合)ではその比率が5:5になる
noteの反響も多く頂き、様々な方が考察をしてくださりました。この場を借りてお礼申し上げます。
その中でも、特に送球について考察していただいたツイート(意地でもPostとは言いません)が多かったです。
今回は、前回の結果をさらに分類して新たにわかったことや防止策について考えていきます。
1.送球ミスは失点につながりやすい⁉
早速ですが、前回の表をバージョンアップさせたのが以下の表です。
左の「失策の総計」は前回のnoteでお見せした数値そのままです。今回新たに追加したのが右側の「失点に繋がった失策数」です。なんぞや?という話なのですが、これに該当するケースは以下の通りです。
その失策によって失点した場合
失策が起きた後に、そのイニングで失点した場合
以上の2点になります。⑵は失策で出塁・進塁した走者が失点した場合にカウントしました。これによって、捕球ミスと送球ミスはどれほど失点に直結するのかを明らかにできると思います。
表の結果をまとめると次のようになります。
逆に言うと、(3)は捕球ミスをしたとしても38ケースは失点せずに済みましたが、送球ミスは28ケースしか失点から逃れられませんでした。つまり、送球ミスの失点リスクは捕球ミスのリスクより大きいということになります。ケース数に限らず、その割合を見ても同様です。送球って恐ろしい…!
しかしよくよく考えてみると、そうなるのが自然かもしれません。捕球ミスと送球ミスは、「本来取れるべきアウトを取れなかった」という点では同じ損失をしていると考えられますが、送球ミスは「(打者走者含む)走者が次の塁に進んでしまう」という二次被害を起こしやすいプレーであると言えます。
例えば、内野ゴロを捕球ミスしたとしても、バッターランナーが二塁まで進塁することはあまりありません。しかし、内野ゴロの送球ミスは一気に二塁まで進塁されることが多いです(もちろん捕球ミスにも進塁リスクはありますが)。こちらの方もTwitterで同じようなことを仰っていました。
このように送球ミスを一つ起こすということは、得点圏へランナーを進めることに直結しかねないということです。そうであるなら失点リスクも当然に上昇しますし、そのリスクの高さは無死>一死>二死となりますので、イニングの序盤で送球ミスを起こすと、そのイニングで失点する可能性が高くなってしまうのです。
2.トレーニングが守備練習になるっていう発想
前章で送球ミスの失点リスクの高さについて考えました。
それなら送球の成功率を上げよう!という話になるわけです。送球の成功率を上げるために必要な要素は凡そ以下の通りでしょう。
①より速い送球を投げられるようにする
②ステップ→スローの動作を伴うリリースを安定させる(コマンド能力を上げる)
③多少無理な体勢でも精確に投げられるようにする
まずは①の改善です。速い送球が投げられるようになれば、届かなくてショートバウンドということも無くなるなどメリットいっぱいです。この改善は言わずもがなトレーニングですね。柔軟性・筋力・瞬発力です。トレーニングしろトレーニング!
気にするべくはプルダウンの数値でしょうか(プルダウンのやり方はこちらの動画をご覧ください)。
外野であればこの数値を見ればいいですし、内野であれば、内野の送球フォームでこの数値に近くしていくことが向上のカギになります。何はともあれ、全力でどれだけ速い球を投げられるかがチェックポイントになりそうなので、必要なのはフィジカルです。トレーニングしろトレーニング!
じゃあどこを鍛えればいいの?という話になりそうですが、こちらの論文を見ると除脂肪体重と体幹部の筋肉量に相関があると言えそうです。
https://kyukyo.repo.nii.ac.jp/record/360/files/kiyo9-1-6.pdf
一部を引用すると、「高速群(速い球を投げる群のことです)に見られる大きな筋量の原因は、投球側に限定された筋量の増加や、上肢または下肢に限定的な筋量の増加といった局所的なものではなく、四肢や体幹の全てにおける筋量の違いを反映していることが示唆された」とのことなので、バランスよく鍛えましょうということです。四肢の筋量も大切なようですが、まずはBIG3を中心に体幹を鍛えていくことが最初の一歩といったところでしょうか。
ただ、フィジカルを鍛えればすべてが解決するということではないようです。こちらの論文にあるように、フィジカルとコマンド能力は比例関係になく、送球の一連の動作をイメージするようなトレーニングを積まないといけないようです。
しかしフィジカル弱者が速い送球を投げられる訳は無いし、フィジカル弱者がそれをしようとすればコマンド能力が落ちて送球ミスにつながりやすくなるのは当然でしょう。トレーニ(略
3.キャッチボールの意義を考えてみる
②ステップ→スローの動作を伴うリリースを安定させる(コマンド能力を上げる)
③多少無理な態勢でも精確に投げられるようにする
これは守備練習で養う能力です。悪送球を少なくなるようにするためには、フィジカルが勿論として重要ということは間違いないでしょう。しかし、ムキムキマッチョは悪送球をしないのかと言われるとそうでもないので、当然のようにスローの練習は必要となります。
そこで工夫して取り組みたいのはキャッチボールです。工夫の仕方としては、急ブレーキをかけてから投げたり、ジャンピングスローをしたりと不安定な体勢から強く正確に投げるようにすることが必要なのではないでしょうか。
野球において、正面から来たボールを正面に投げ返すようなプレーはあまり起こり得ません。しかも、悪送球は余裕のない体勢から投げたときに起こる傾向がある、ということを前回のnoteに書きました。特に内野手は身体を反転したり切り返したりして投げるプレーもあるので、キャッチボールでぎりぎりの体勢から投げる練習はしておくべきでしょう。
ここで重要なのは、「あえてギリギリの体勢を作ってから投げる」ということです。ちょっとファンブルしたり左右にステップしたりするのではなく(それも大事ですが!)、ギリギリの不安定な体勢を作ってください。悪送球をしそうな状況を作って投げる→それを強く正確に投げられるようになるまでトライ&エラーを繰り返すしましょう。ただ、まずは悪送球してOK、そこから問題を見つけて改善していこうという寛容な考えが指導陣には必要かもしれませんが。
4.まとめと反省
今回の調査をはじめたきっかけは僕(監督)の思い付きで、「失策減らしたいんだけどどうすればええんやろなあ…」→「そもそも失策って何や?」となったのがきっかけでした。
そんなアホみたいなきっかけで始まった調査ですが、思っていた以上の結果と疲労になり、多くの方から反応や意見をいただきました。ただの思い付きでも、ちゃんと調査すればちゃんとネタになんだなと勉強になりました。
では、今回分かったことと課題をまとめてこの調査を終わりにします。
以上がまとめとなります。捕球ミスの課題で出てきましたが、高校野球で入手できるデータは貧弱で、打球速度などの情報を入手することは現状不可能です。今回の調査はアプリの見逃し配信だけで分析していたので、肝心なところが映っていなかったり、僕の主観で判断せざるを得なかったりしたところがいくつかありました。そのせいで実態と乖離してしまったであろう数値が多少あると思いますので、次回は少しでも現実に近い結果を残せるように改善していきたいです。
今回も長編となりましたが、ここまでご覧いただきありがとうございました。noteを書くようになってから「皆様のコメントが励みになります!」とかいうYouTuberの気持ちが痛いほど分かるようになってきました。もしよろしければ、監督を労わるためにいいね!やコメントいただけると幸いです。批判は優しくお願いします。
最後までご覧いただきありがとうございました。少しでも気になった方は「いいね」「フォロー」ボタンを押していただけると執筆の励みになります。また、もしご意見やご感想がありましたら、noteのコメント欄やTwitter(意地でもXとは言いたくないです)、Instagramでどんどんお寄せください。お待ちしております。
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