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メキシコ人従業員採用開始

2008年4月に開業して以来、街の大学に通う日本人留学生や当時は日本人宿があったこともあってその宿に長期宿泊していた日本人にお願いしてお店でアルバイトとして働いてもらっていた。賄い付き、時給15ペソというそれなりに良い条件でのアルバイトではあったけれど、ある日移民局の制服を来たグループが街をウロウロしていたのを見つけた僕は少し弱気になってしまって、日本人にアルバイトしてもらうことを躊躇い始めていた。

それから、その街の大学には日本語学科があって、日本語を習うメキシコ人学生が多くいたこともあって、彼らにアルバイトを頼むようになってきていたけれど、授業の時間がバラバラなのと、不定期なこともあってフルタイムで手伝ってくれるメキシコ人を探していた。

そんなとき、妻が「大学のカフェにとってもいい感じの女の子が別の仕事を探してるらしい」と一人のメキシコ人を店につれてきた。

それが、デリカミツフルタイム従業員第一号のクラウディアである。

クラウディアは当時19歳、田舎出身の彼女はとても素直で働き者でとにかく綺麗好きでいつも掃除をしているような、とにかく僕達にとっては嬉しいかぎりの従業員だった。

クラウディアが働き始めてから3ヶ月後、妻が第二子を授かり、つわりが酷く店で働くこともままならかった為、僕達はクラウディアにとても助けられた。 

他のメキシコ人の学生アルバイト達も働けるとはいえ週に多くて2日、一日3時間という中で、彼女はフルタイムで僕達と一緒になって忙しくなりはじめてきた店を切り盛りしてくれた。

クラウディアが働きはじめてから1年余りが過ぎたころには次男も産まれ、彼女は良く面倒を見てくれた。週末には彼女の家に招待され食事を一緒にしたり、メキシコ人家庭のパーティーを楽しんだりしたのは今でも記憶に残っている。

僕は彼女を頼りにしていたし、彼女も「将来は私も同じようにお店をやりたい」と目標を持って働いていたことや、少しづつお客さんも増えて来ていたので僕は彼女の給与を上げた。彼女は益々やる気になってくれて僕達は良い関係を築きながら每日を過ごしていた。

日本のテレビの取材を受けたのもその頃。彼女は日本のテレビにも写ってとても喜んでいた。クラウディアは仕事の事や、学生時代から付き合っている彼との結婚の事、家族の事などとにかくなんでも話してくれて、なんとも良い子だった。

そんなクラウディアは従業員として初めて僕がメキシコで採用した子で、そして初めて辞めた子だった。

そう

ある日突然本当になんの前触れもなく仕事に来なくなったのである。

つづく


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