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死んでリャマはポンチョを残した
『アンデス、ふたりぼっち』(2017/ペルー)監督オスカル・カタコラ 出演ローサ・ニーナビセンテ・カタコラ
解説/あらすじ
南米・アンデス山脈。標高 5,000mを越える社会から遠く離れた場所に暮らすパクシとウィルカ。アイマラ文化の伝統的な生活の中で、リャマと羊と暮らしていた。コカの葉を噛み、日々の糧を母なる大地のパチャママに祈る。ある日、飼っていた羊が狐に襲われてしまう。さらに、マッチを買いにいった夫・ウィルカはその途中に倒れてしまう…。そして都会に出た息子の帰りを待つふたりにやがて訪れる、心を震わせる衝撃のラストシーンを我々は目に焼き付けるだろう。
アンデスの雪山の麓に暮らす老夫婦。小津映画を彷彿させるという宣伝文句に夫婦連れが多かったが、そんなのほほんとした映画とは違う。黒澤映画の影響も受けたというがどっちかというとそっちというか、タルコフスキーみたいな。
不条理劇なのだ。年寄り夫婦だけがそんな厳しい自然の中で暮らさなきゃならん。息子は里に降りてしまったらしい。見捨てられたのは息子よりはアンデスの神にという感じで暮らしている。次々に起こる悲劇。
家畜である羊の結婚式というほのぼのシーンから始まるのだがアンデスの氷の雪山の厳しさ。羊は狐に食われ、リャマ一匹が残るだけに。そして、さらに食料もなくなっていく。そんな時に火事を起こしてしまう。燃える家。石造りなんだが、中は衣類などで火の見張りの不注意からの出火。
燃えるに任せるままの老夫婦の祈りにアンデスの自然は冷たかった。食料が尽きて、老父が病気になり、いよいよリャマも殺さなければならなくなる。
こんな自然の厳しさを見せて原題が『永遠』とは?それは人間の営みとして繰り返されてきた自然の不条理なのだが、そこに生き続けた人たちがいたということだ。そして彼らが不条理の中で消えていくときにアンデスの尊さを知るのだろう。
この監督は、第一作目で遺作(34歳で亡くなる)になってしまった。それも不条理だが映画は残った。
リャマ死んで老婆は里に行商へ
ポンチョを売りにアンデス下る 宿仮