マッチ一本歌事のもと(第五話)
休みん俳『勝手に企画』
『同じ月を見上げて』
『マッチ一本歌事のもと』
朝、目覚ましより先に一通のメールで起こされた。上条フミコからだ。そのメールを読んで、おれの眠気は一気に吹っ飛んだ。
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今日は白百合女学園との対抗歌会です。五人の代表者によって短歌を詠み、お互いに批評して、勝負を決めるのです。勝敗はお互いの顧問の先生が一票づつ。そして歌人のプロ(当校出身者のゲストなんで)が一人、それが一票。つまり三票(二票はうちの学校の票)で勝負が決まる馬鹿らしいお遊びでしかないのですが、私は都合がつかず出れません。その代わりにあなたを推薦しておきました。顧問の尺八(釈青空)先生には話がつけてあります。短歌は柳棚国男に見てもらって下さい。彼は歌の才能はないけど、批評眼は部員で一番だと思います。部長の俵田万智には相談しないこと。彼女は自分以外に興味がなく、他者を受け付けないです。まあ私もそうだったけど。最後にあなたに出会えてよかった。お題は「月」。健闘を祈ります。 かしこ
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これはどういうことなんだと修一は思った。ただ俺のデビュー選が今日だってことだ。そのお膳立てをフミコがしてくれたということ。かしこに名前を変えたようだけど。
まずは短歌だった。本歌取りだよな。フミコの短歌にしておくか?修一は起き上がるとマッチを擦った。
マッチの炎が揺れて、フミコの歌を映し出す。それがメラメラ燃えてゆく。ああ、だめじゃないか?俺は言葉を失った。