シン・俳句レッスン135
満月
月は秋の十五夜と決まっているが、俳句ではいつでもいいというのを誰かが言っていたようである。月はいつでも見られるので季語には含めないという考えなのかもしれない十五夜は行事だから季語として存在する
字足らずの句。それは線香花火が途中で終わったという意味を含ませている。また線香花火の火の玉を月に見立てて落ちてきたらという幻想性も。線香花火が季語である。
NHK俳句
一番暑苦しい解説の俳人だよな。「曜変天目」の解説で日本に3つしかないから価値がある的な説明。美の観念が権威的なのかと思った。もともと中国の器であり宋代には貴族が使っていたという。それが中国では社会主義になって美の価値観が変わっていくので、この器の価値を知る人も居なかったということなのだが、貴族の器だったら隠して愛好者がいたかもしれない。
面白い話で「なんでも鑑定団」でこれと似た器が出品されて騒動と成った事件。中国で数千円で売られていたという。
美の権威としては世界に3つしか現存しないから価値があるのである。だから中国のバッタモンとは違うのだという偽物扱い。ただ美の評価として専門家が値段を付けたのなら、それなりに買い手がいるということなのである。おかしいのは美の観念が値段であり、本質的なところで美を理解してないということなのだ。ただそこに美しいと感じればいいのに、権威的な美を語る。だからこの選者の説明もただ博物館的な蘊蓄にすぎなく暑苦しいと感じてしまう。
「涼しさ」を感じるためには内面が必要だということだ。とてもこの部屋ではそういう内面に到達できそうもない。
こういうこと言うのはよくないな。ヨイショしなければ。
良句=涼句と掛詞である。
今日は無理かな。
百人一句
前回、女性の句が一句もないのに気がついた。今日は女性の俳句十句。
11 夏みかん酸っぱし今さら純潔など 鈴木しづ子
最初の頃に好きになった伝説の女性俳人、鈴木しづ子。
12 ひるがほに電流かよひゐはせぬか 三橋鷹女
4Tでは鷹女。だいたい女性俳句は4Tから入ればそれぞれ違った個性で楽しめると思うが、4Tには入ってないけど重要な女性俳人としては、久女がいた。
13 足袋つぐやノラともならず教師妻 杉田久女
杉田久女は最初虚子の目にかかったのだが、やがて虚子の脅威となって「ほととぎす」を除名される。「谺して山ほととぎすほしいまま」こんな句を作っていたら警戒されるよな。
14 短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎(すてつちまおか) 竹下しづの女
竹下しづの女は教師妻なんだが、久女の言う意味ではなく、自立した職業婦人(キャリアウーマンか?)としての働く女を全面に出して、なおも表現も斬新な句を詠んでいる。下五が漢詩からの引用だが口語になっている。
口語俳句の先達としては、池田澄子がいる。
15 じゃんけんで負けて蛍に生まれたの 池田澄子
俳句や短歌の短詩は文語でなければ十分表現できないというのを覆した口語俳句だが、その分真似されやすくコピー文化現象というべき俵万智化していくのだと思う。そのへんの問題をどうクリアしていくか今後の課題か?
16 さるすべりしろばなちらす夢違ひ 飯島晴子
川名大『昭和俳句史』で最後に登場した飯島晴子は印象的な句を残した。虚子の白牡丹ではないが、百日紅というと赤をイメージしやすいのに白という、さらにそれが「夢違い」という下五の付け方にセンスを感じる。
17 呪ふ人は好きな人なり紅芙蓉 長谷川かな女
俳句エピソードでこの話はけっこう好きだった。杉田久女と虚子をめぐる話。かな女は杉田久女とともに虚子の弟子だった。
18 ひとりゐて刃物のごとき昼とおもふ 藤木清子
藤木清子は新興俳句の中の数少ない女性俳人だが、斬新な句を残していた。これは戦火想望俳句の銃後の句だが、今も通じるものがある。
19 ギャング寝てもの編む間を母は得ぬ 志波汀子
志波汀子も新興俳句の人だがモダニズム俳句のような斬新さ。今より今風かもしれない。今はほとんど知られず忘却されている。
20 ひきだしに海を映さぬサングラス 神野紗希
神野紗希は若手No.1というか現在の俳人で一番だと思うが、あまり俳句を知らなかった。検索したらこの句が出てきた。確かに斬新だ。