シン・短歌レッスン151
『「恋と革命」の死 岸上大作』福島泰樹
『無援の抒情』とともに短歌で綴る60年代。福島泰樹がちょうど岸上大作と道浦母都子の中間であり、池上大作が自殺したのが1960年だった。高野悦子『二十歳の原点』が60年代の終わりなので、そうとう前に感じる。樺美智子が国会デモで亡くなったのが1960年でその時期と重なる。何故そんなことに拘るのかというと安保闘争と全共闘は違うと思うからだった。安保闘争はまだ反体制でいられた時代だが、全共闘の後半はリンチ事件やゲバルトがあり、すでに反体制は危ない奴らという認識が強かった。それがよくわかるのが道浦母都子『無援の抒情』で、すでに大衆は反体制運動に嫌気がさしていたのだと思う。そういう意味では福島泰樹はまだ60年安保の反体制気分が残っており、それが岸上大作を革命のアイコンとしたのだろうと思う。
ただ岸上の方は革命よりも恋の方が重要だったのである。その点で高野悦子『二十歳の原点』や道浦母都子『無援の抒情』と共通したものを感じる。
NHK短歌
鳥はイメージとして青い鳥だった。希望を感じさせるのでちょっと難しいかな。鳥の歌で詠むか。
昨日やった 翡翠の歌が良かった。
これは難しい。驚いて飛ぶという発見と息継ぎという観察眼という。
投稿ではこれが良かった。「むくどり」の重ね方がむくむくと大きくなっていく群れのようだし、「声で一樹を持ち上げんとす」が見事だ。
「言葉のバトン」は文月悠光。ひそかに尊敬している詩人だった。本は読んだことはないのだが。
百人一首
今日で終わるな。後でまとめると思うが重なった人がいるからまだおわらないかも
91 意思表示せまり声なきこえを背にただ掌にマッチ擦るのみ 岸上大作
今日やった岸上大作だとやはりこの一首か?
92 子が忘れゆきしピストル夜ふかきテーブルの上に母を狙えり 中条ふみ子
中条ふみ子もこれと入れ替えだな。偶然の出来事が必然となるような。ここでは子の意志は関係ないと思うがそれが彼女の運命だったのだ。
劇場死を演じるかのような歌はそれを望んでいたのだろうか?それが演技であればあるほどその絶望感は深いような気がする。
93 好きな色は青と緑と言うぼくを裏切るように真夏の生理 松野志保
松野志保『モイラの裔(すえ)』から。パレスチナの「モイラ」の末裔ということらしい。「モイラ」はギリシア神話に出てくる運命の三姉妹。「運命」とか「寿命」とか人間の「死」を司る女神だという。そこに「エロスとタナトス」を見出すのかもしれない。
94 遠くまで聞こえる迷子アナウンス ひとの名前が痛いゆうぐれ 兵庫ユカ
山田航『桜前線開架宣言』より「兵庫ユカ」。山田航がいうには現代短歌随一の言葉の刃が鋭い歌人だそうだ。
95 詩は遊び?いやいや違ふ、かといつて夕焼けは美しいだあけぢや駄目だ 藪内亮輔
藪内亮輔の歌集が無かったので収録されている山田航編集『桜前線開架宣言』を借りてきた。これは穂村弘以降の現代歌人のアンソロジー。けっこう刺激的な短歌が出ている。藪内亮輔は岡井隆の影響を受けているらしい。
96 もう二度とこんなに多くのダンボールを切ることはない最後の文化祭 小島なお
小島なおは小島ゆかりの娘だけあって、コトバの使い方が上手い。今しか読めない青春短歌を東京の情景で詠んでいるという。『
97 性欲が目薬のように落ちてきてかみなりのそらいっぱいの自殺がみえる 瀬戸夏子
瀬戸夏子は一首短歌ではなく詩の中に短歌を織り込んだり、連作として「自我」や「短歌」そのものを疑う前衛短歌の系統。
98 三越のライオンみつけられなくて悲しいだった 悲しいだった 平岡直子
早稲田短歌会出身者らしく批評をする歌人だった。「悲しいだった」は現代語の文語的表現である。その前が口語的なのだが、いきなり文語体に変化するおかしさ。まあ、現在の文語使いもこんな感じなのか?
99 春の船、それからひかり溜め込んでゆっくり出航する夏の船 堂園昌彦
堂園昌彦も早稲田短歌会出身者のホープだという。学生歌人はひねくれている人が多いかも。
100 パチンコ屋の上にある月 とおくとおく とおくとおくとおくとおく海鳴り 永井祐
永井祐はデビューした頃はベテラン歌人に叩かれていたが、今は若手の手本となるような歌人だった。
最初から山田航編集『桜前線開架宣言』を使っておけば良かった。この若手歌人のアンソロジーはいいです。若手の作品がまとまって掲載されている。
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