誹謗中傷が許されてしまう社会
『標的』監督西嶋真司(2021年/日本/99分)
真実か。捏造か。
「捏造記者」の汚名をそそぐ闘いが始まる。
1991年8月、元「慰安婦」だった韓国人女性が証言を始めているという記事を世界で初めて報じた朝日新聞大阪社会部の記者・植村隆。安倍晋三衆院議員が首相として政権に復帰した後、2014年になって「捏造記者」という執拗なバッシングが始まった。誹謗中傷は次第にエスカレートし、彼が教職に就くことが内定していた大学、そして家族までもが卑劣な脅迫の対象となったのだ。この韓国人女性が名乗り出た後、他のメディアも植村と同じような記事を伝えたが、なぜ彼だけが「標的」にされたのか?一方、不当な攻撃によって言論を封じ込めようとする動きに対抗するために、大勢の市民や弁護士が支援に立ち上がった。
本作は、植村と彼を支える人々が理不尽なバッシングに真正面から立ち向かう姿を記録したものである。2021年の第26回釜山国際映画祭へ正式招待(ワイドアングル部門ドキュメンタリーショーケース)されると、韓国メディアから高い注目を集め、監督を務めた西嶋真司は、アン・ジョンピル自由言論賞を30年余りの歴史の中で日本人として初めて授与された。
素晴らしいドキュメンタリー映画である。植村隆の記事の「捏造」問題。従軍慰安婦を「女子挺(てい)身隊」の名で連行されたという証言を書いたことが捏造とされた。それは証言だったのだ。「女子挺(てい)身隊」が何を意味するのかわからなかったが強制労働させられた工場労働者だったようだ。本人の意識の中でそういう認識があったということだ。どこが捏造だろうか?
この記事のからくり。同じ北海道新聞の記事を書いた人は、非難されたわけではなかった。当時の「朝日新聞」だけ、「従軍慰安婦」の記事がやり玉に上げられた。櫻井よしこもその記事を書いていたのだ。彼女は自分自身が捏造だと謝罪したのか?産経新聞も書いていた。なぜ「朝日新聞」だけが?という謎?
櫻井よしこの説明によると「朝日新聞」が大新聞でそれが海外に広めたからということ。そして、捏造であるという裏は取れていたのか?彼女はその裏を本人に確認して取ってはいなかった。都合のいい記事の引用と御用記者の記事によるものだった。西岡という安倍晋三御用記者たちがいる。
安倍晋三の教科書問題、NHKの恫喝問題、すべてが安倍晋三が国会議員になったときから始まっていた。日本会議という存在の中でそれまでの日本の路線を右傾化させていく組織があるのだ。一連の教科書問題や朝日新聞バッシング。その時の朝日新聞の問題。原発問題から、何か謝罪記事ばかりだった。そして、今の政権べったりな朝日新聞の姿がここにある。それはNHKにも言える。
それまで従軍慰安婦の番組を数多く作られてきたのに、ある時期から番組が通らなくなってしまった。政府の介入である。NHKの体質問題は、最近のオリンピック問題に象徴されるように、体制側べったりになってしまっている。公共放送は政府のためにあるのか?国民のためにあるのか?まあ、国民が国家のために従属させらる国づくりをしようとしている政党が権力を握っているのだ。憲法も変えようと躍起となっている。
さらに植村記者に対しての誹謗中傷問題。北海道の大学を辞めさせられたのだ。大学当局まで誹謗中傷を送りつける手紙やハガキ。学生を傷つけるとか、あきらかに脅迫罪だろう。それを取り締まれない警察もどうかしている。さらに娘さんまでも。
ネットによる個人情報公開と誹謗中傷。あきらかに恐喝罪だ。実際に裁判になって有罪になっていた。今のネット社会も徐々にそういう傾向にある。黙らないことだ。誹謗中傷されたら記録を取っておいて、然るべきところに相談しよう。まず警察か?日本の警察もあてにならないのだけど。
まず櫻井よしこは、捏造といいながら自身がその裏を取っていない。御用記者の西岡とういう記者の誹謗中傷がひどすぎる。そういう体制が日本社会を徐々に権力側に擦り寄せている。それは、今のNHKやマスコミ報道をみれば明らかである。すくなくともこのような反権力の映画が多くの人に見られることを願うだけだ。
誹謗中傷が安易に許されてしまう社会がいいのだろうか?河野談話(日本政府による謝罪)は、上村さんの記事によってなされているのではないのだ。その問題は、国際世論にも問いかけられる。
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