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ヤクザだけではなく、ロシア政府や香港マフィアの闇ルートの「密漁ビジネス」

『サカナとヤクザ: 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』鈴木智彦

築地市場から密漁団まで、決死の潜入ルポ!
 アワビもウナギもカニも、日本人の口にしている大多数が実は密漁品であり、その密漁ビジネスは、暴力団の巨大な資金源となっている。その実態を突き止めるため、築地市場への潜入労働をはじめ、北海道から九州、台湾、香港まで、著者は突撃取材を敢行する。豊洲市場がスタートするいま、日本の食品業界最大のタブーに迫る衝撃のルポである。

その前読んでいたのが社会学やサブカルの本だったので、こういう潜入ルポのような本はワクワクしてしまう。実際に、鈴木智彦の本は三冊目だった。『ヤクザときどきピアノ』『最貧困女子』。この本を買ったのも偶然で、漁業業界の闇世界を描いた映画を観たからだ。

高級海産物を食べることもなくなった最近である。せいぜい秋刀魚かカツオぐらい。鮑とかマグロとか寿司屋にも行かなかいので、ほとんど口にしない(と思ったら銚子の秋刀魚漁にもヤクザが絡んでいるという話も)。食通でもなかった(食べ物より本だろうという感じで)、人付き合いも避けていたから、高級料亭や寿司屋には行かないし、せいぜいファミレス止まりだ。ただ密漁の問題は闇が深い。根室のカニ漁のロシア関係や中国産ウナギの香港関係は、日本の貪欲さにつけ込んだ政治やマフィアの存在がある。

だから罪の意識なく読める。それに金持ちがこういうのにぼったくられるのは読んでいて面白い。初競りの高級マグロがどうして食いたいのかその気持もわからん。たしかに美味しいマグロはある。ただそんな食生活に贅沢している人はいつか痛風になると周りを見ていて思ってしまったのだ。食に贅沢を見いだせないけど読書でそういう贅沢を読むとスーパーで買った食材でも美味しく感じられる人間だった。

掴みが上手いと思う「黒いあまちゃん」である。NHK朝の連続ドラマで「あまちゃん」が話題の時に三陸アワビ密漁団の潜入レポート。

そして、東京の筑地市場でも実態調査。年末と正月のかきいれ時の潜入労働はいろいろ筑地市場の実態が伺われて面白い。ヤクザのつながりとか地下に放射能マグロが埋まっているとか。密漁も産地偽装が施されて我々の口に。ほとんど気づかれないという。

先の「黒いあまちゃん」の悲惨な経過報告。男は密漁(ヤクザの成れの果て)で女は売春。ここでもヤンキーと地元の構図なのだ。北海道のナマコ(黒いダイヤ)の密漁は中国向けだという。日本ではそれほど食べない。近年の中国の富裕層の増大なのだ。

浅瀬のナマコは取り尽くし、沖で酸素ボンベの潜水で取る命がけの密漁になっているのだという。それでも無くならないのはそれだけ中国が高く買うからだ(経済格差)。


銚子のサンマ漁とヤクザの繋がり。ヤクザを排除しようとする共産党が勢力を拡大していったが網元と漁師との関係は、表に表れる漁獲高だけではなく、裏稼業もあることから(行商人に売る)、漁師はヤクザの支配から抜け出せない。

戦後GHQによってアメリカ人記者の記事が出て、ヤクザの親分高橋寅松(通称高寅親分)を追放したが、高寅親分の物語は戯曲化されるなど人気を博した。結局、彼は逮捕されても出てくるのだ。そういう話は、語り継がれて今も人気を博している。地元ヤクザと漁師の繋がりは結構あるのだろう。漁というのがもともと生産性を求めるものでなく、自然から分捕るものだから、それも相性がいいのかもしれない。

ジャズプレイヤー菊地成孔の出身が銚子で、作家の菊地秀行の作品も銚子のアウトロー的なものの影響を受けているのだろう。

根室の北方領土への密漁は、ソ連側からレポ(スパイ)を求められて密漁も大ぴらに出来るという話が面白い。漁民は日本政府の言う事なんか信じてないで、自分たちの利益のあることをするのだった。そういえば北方領土のドキュメンタリー見たとき、日本土産が多いのだった。

なるほど。密漁(レポ)船とヤクザとスパイと公安と道警の関係は複雑で、白石和彌監督に映画にしてもらいたいぐらいだ。オウムの警察庁長官狙撃事件もソ連のスナイパー説とかあったし、武器もロシアが関わっていたとか。危ない話がいっぱいありそう。

絶滅危惧種に指定されるウナギだが、その稚魚であるシラスの闇取引の実態。日本のヤクザだけではなく、香港マフィアも絡んでいる中国産シラス。それは、台湾では出荷禁止になり、香港ではシラスの遡上してくる川がないのに、台湾のシラスが香港で売られる。日本の牛丼チェーンとか、ウナギが絶滅危惧種になっているのに大量に出回っている理由は、ウナギ国際密輸シンジケートあるのだ。


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