ピエル・パオロ・パゾリーニ生誕100年!
『テレマオ』(イタリア/1968年)監督ピエル・パオロ・パゾリーニ 出演テレンス・スタンプ/シルバーナ・マンガーノ/マッシモ・ジロッティ/アンヌ・ビアゼムスキー
パゾリーニの感性は、絵画的感性なんだと思う。物語はそれほどでもない。あるイタリアのブルジョア家庭に異質の男が転がり込んできて彼の魅力に取り憑かれてブルジョア家庭が崩壊するドラマ。まあテレンス・スタンプが異星人みたいで、ウルトラマン的に言えばメフィラス星人なわけだった。
フランシス・ベーコンの画集を見せるシーンがある。この時代にこの画家を見出すのは凄い早いと思うのだがパゾリーニもゲイだということが関係しているだろうか?ドゥルーズがフランシス・ベーコンについて「出会う」ということで書いていたと思ったがそういう出会いがあるのだ。
不気味なるものだがそれに惹かれていくしまう異邦人性。パゾリーニの中にある(ヨーロッパだな)キリスト教文化におけるタブーとされながら惹かれてしまう美意識なのか破壊衝動なのか、ランボーの詩集はわかりやすいと思う。そして、音楽ではバッハの『マタイ受難曲』が流れる。
シルバーナ・マンガーノの妖艶な色気(イタリア映画の傑作『にがい米』の主演女優、つまりイタリアの母親的存在)とアンヌ・ビアゼムスキーの知的な匂い。その二人の女性(母と妹)を狂わすのならありがちな物語なんだが、親父と弟までも狂わすのだった(喜劇的だけど)。近親相姦的なものと異邦人性の繋がりは、貴種流離譚の古典劇から来ているのだと思う。
『王女メディア』(イタリア/フランス/西ドイツ/1969)監督ピエル・パオロ・パゾリーニ 出演マリア・カラス/ジュゼッペ・ジェンティーレ/マルガレート・クレマンティ
解説/あらすじ
イオルコス国王の遺児イアソンは、父の王位を奪った叔父ペリアスに王位返還を求める。叔父から未開の国コルキスにある〈金の羊皮〉を手に入れることを条件に出され旅に出たイアソンは、コルキス国王の娘メディアの心を射止めて〈金の羊皮〉の奪還に成功。しかし祖国に戻ったイアソンは王位返還の約束を反故にされ、メディアと共に隣国コリントスへ。そこで国王に見込まれたイアソンは、メディアを裏切って国王の娘と婚約してしまう。メディアは復讐を誓い…。
歌わないマリア・カラスが主演という残念な映画かと言えばそうでもない。映像が素晴らしいのだ。絵画絵巻を観ている世界だ(ヨーロッパにはないだろうが)。音楽が最初はアラブだったのだが、終わりのほうは日本の音楽。オリエンタリズムな範疇なんだろうけど、面白かった。
制作ドキュメンタリーがあるんだ。『ドキュメンタリー 王女メディアの島』これ観たいぞ。
物語はこれまたよくわからないというかギリシア神話ぐらいお前ら常識だろう!というパゾリーニの奢りがあると思う。まあ、ヨーロッパでは誰でも知っている昔話のたぐいなのか?最初にケンタウルスが出てきて、その息子に語るメディアの話なのかな。その息子も退屈で寝てしまうのだが、私も途中寝ていた。
ただ王女の衣装と舞台が素晴らしい。遺跡で撮ったのだろうね。夕陽が遺跡の間から差し込むシーンとか夢見る世界だった。