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百人一読(冬の読書から極北文学の本)
「極北文学」とはあらゆる面であっち側に行っている文学でしょうか。わかりやすいのだとアンナ・カヴァン『氷』とか。サンリオ文庫ですね。現代文学の極地ということだと思います。不毛の土地であるから遭難しなように心してかかれ。
81 アンナ・カヴァン『氷』
わかりやすいと言えばわかりやすいか?薬物中毒の植民地文学かな。カフカ『田舎医者』にも比較される極北文学ですね。
82 『石原吉郎詩文集 』
シベリア抑留生活からコトバというものを問い続け、ついには沈黙するしかなかったという詩人ですね。シベリア文学というものがあるとしたらこれも極北文学の一つ。パウル・ツェランもあった。それは詩のベストかな。
83夢野久作『ドグラ・マグラ』
「ドグラ・マグラ」は精神病棟もののフィクションです。奇書の部類か?ノン・フィクションでもかなり際どい作品があると思いますが、江戸川乱歩『芋虫』を読んで思い出しました。武田泰淳『富士』もそうした文学ですけど、泰淳は妻の武田百合子『富士日記』は日記文学の極北か?
84 沼正三『家畜人ヤプー』
これも奇書の部類ですね。スウィフト『ガリバー旅行記』に出てくる「ヤプー」人にされる日本人の話です。検索サイトYahooの語源ですね。
85 八本脚の蝶
二階堂奥歯が『家畜人ヤプー』などの文学を紹介したネットの日記形式の 書評サイトの書籍化です。書籍化されてから読んだのですが、好みの文学について語っていました。だいたいこの辺なのかな。「八本脚の蝶」というタイトルがいいです。
86 尾崎翠『第七官界彷徨』
上の本でも紹介されたと思うのですが、要は第六感以上に凄い極北世界がありますよという話なのかな。簡略し過ぎかもしれないけど、目に見えない幻想世界に彷徨うという精神の病一歩手前なのかな?この世界は少女漫画のロマンチシズムに繋がっていくようでオタク性があるような。
87『オルペウスとエウリュディケ』
元はオウィディウス『変身物語』のギリシヤ神話なのだが、「古事記」の黄泉の国巡りに似た話で、ブランショ『文学空間』では死の彼岸の国として、オルペウス(オルフェウス=オデッセウス)がセイレーンの聞いてはいけない声を聞いてしまったために冥界に彷徨うという物語だ。それは幻聴というもの、普通の人には見えない世界を提示する幻視の世界に彷徨うことの原型が提示されていると思う。目に見えないものは音(声)として主人公を冥界へ誘うのだった。
88トーマス・ベルンハルト『石灰工場』
ベルンハルトは極北の文学とされたのも、見えない世界に聴覚によって彷徨うからだろう。この小説は間接話法で噂の中を彷徨う小説で文体が斬新だった。
89 残雪『黄泥街』
中国のカフカと言われる女性作家です。文化大革命を経験しており、その時に瓶の中に隠された中で悲劇を体験したのでした。彼女の小説に出てくる臭気は中国の生活の匂いなのか?その中で死と隣合わせの世界を描いている。臭気という美の観念とは反対の醜に繋がっていく悲劇を喜劇的に描いた作品か?とにかく臭いを感じさせる文体は凄いと思ってしまった。
90 クロード・シモン『三枚つづきの絵』
ヌーヴォ・ロマンのノーベル賞作家のシモンは、戦争文学の方がいいのかもしれないですが未読だった。唯一苦労して読んだのがこの作品で、破れたポスターの中の絵の物語が入れ子状態で語られる、これも戦争文学だったのかな?語りの手法ですね。