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偶然と想像というより、映画と文学

『偶然と想像』(日本/2021)監督濱口竜介 出演古川琴音/中島歩/玄理/渋川清彦/森郁月/甲斐翔真

濱口竜介、初の短編集にして最新作。第1話『魔法(よりもっと不確か)』、第2話『扉は開けたままで』、第3話『もう一度』で構成される。

第1話『魔法(よりもっと不確か)』

最近、自分が古い人間だと気づきつつある。こんな映画を見せられると特に。全然共感できないのだ。むしろ席を立ちたくなった。映画館が満席状態で諦めたけど。

芸能人っぽい自己中の女と付き人?仕事以外で友だち関係みたいな。タクシー内での会話に腹が立つというか、運転手を無視して人と思ってないだろう!と思うようなデリカシーのない会話。女子会のノリなんだろうけど、こういうのは我慢できない。タクシー運転手なんてなれない。

それでそのスター気取りの女がタクシーをUターンさせて、元カレの事務所まで行く。タクシーをUターンさせるのだって腹立たしいのに、元カレと言っても仕事中なのに、プライベートのことで関係者とか言って入ってくる。自己中もいいところ。こんな女と付き合っているのもどうかしていると思うが、共感する自分物がいなかった。タクシー運転手かな。愚痴もこぼさず勤務していて偉かった。

それでその親友の女の子がチャラい男かなというのだが、十分チャラいもの同士だと思った。チャラすぎる。こんな腹立たしい映画は初めてだ。ただそこまで感情を揺さぶるのはもしかして逆の意味で凄いのかもと思ったのは次の映画を観たから。

第2話『扉は開けたままで』

ほんとこれも前半は、最近はこんな奴ばっかなの?と思うぐらい非道い登場人物だった。芥川賞受賞した大学教授もなんかぱっとしないのだけど、カウンセリングみたいになってほろりと生徒が涙を流すシーンが良かった。このへんの脚本の上手さかな。さらに後日譚でのどんでん返し。それも見事にハマった。

嫌な奴はギャフンと言わせたい。そんな映画だった。第一話は、そのまま改装中の渋谷駅でスマホで写真を撮るラストは、『寝ても覚めても』のシーンだと気がついた。自己中改装中ということ?

第3話『もう一度』

前の映画で脚本が上手さを感じたぶん、これは役者のあらが目立ってしまった。脚本も文学っぽいのだ。普通こんなこと言わないだろうと思えるセリフを棒読みのように言う。映画より文学だよな。

それでも面白いと思ったのは、解釈が2通りに取れるからだ。本当に間違えていたのか、それとも親友が嘘を付いていたのか。自分は後者だと思ったが、どっちにも解釈される脚本は面白いと思う。ただこれは映画というより文学。


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