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フィクションだと思っていた世界が現実になる恐怖
『NOPE/ノープ』(2022/アメリカ)監督ジョーダン・ピール 出演ダニエル・カルーヤ/キキ・パーマー/スティーヴン・ユァン/マイケル・ウィンコット/ブランドン・ペレア
予備知識なしで観に行ったのだが、説明されてもよくわからんだろうな。未確認飛行物体が人間を襲うというただそれだけの映画なんだが、ホラーなのかSFなのかジャンル分けが難しい映画。
オープニングでコメディのお笑い番組でチンパンジーが人を襲う。『猿の惑星』のようでもあるし、『2001年宇宙の旅』のオープニングを連想した。UFOがドローン兵器みたいだし、エヴァの使徒のようでもある。それは人を襲う目的がよくわからんのだよな。自然現象なのか?チンパンジーが人を襲ったり撮影の馬が人に蹴りを入れたり、そういう感情と繋がっている。
監督が『ゲット・アウト』の監督で、ウルトラセブンの異星人もののような映画を撮る監督だから、そんな路線。そういえば『ミナリ』のお父さんが出ていた。子役時代にチンパンジーに襲われた過去があるけど、大人になってそういう見世物でやっているのだ。そういう見世物が現実になる。
現実と虚構の境界がなくなる恐怖のようなもの。それは黒人社会というものが負わされていることなのかもしれない。黒人差別やアジア人差別の恐怖観が深層にあるのかもしれないと思った。そのわからなさが、不気味なドローンのような殺人兵器で、いつ襲ってくるかわからないというような。日常があっという間に、非日常の空間になってしまう現代ならではの恐怖感。