「道化師」というより「ジョーカー」の顔を持つミンガス
Charles Mingus『The Crown』( Atlantic/1957)
Charles Mingus - bass
Shafi Hadi - alto and tenor saxophone
Jimmy Knepper - trombone
Wade Legge - piano
Dannie Richmond - drums
Jean Shepherd - narration (track 4)
こう寒い朝だと起きるのも決意が必要だ。そんな時のファイティング・ソングは「Haitian Fight Song(ハイチ人闘いの歌)」。ミンガスは先住民の血を引いているジャズ・ミュージシャン。先住民(アメリカ・インディアン)の血を引くミュージシャンはカントリー・ロック系に多いのだが、そこがミンガスの風変わりなところだ。たぶんエリントンやストラビンスキーというようなクラシックに近いジャズから入ったのだろう。だから作曲の音楽理論もしっかりしている。
ミンガスのベースの出だしがこの曲を先導していく酋長の足踏み。このベースラインの見事さ。ミンガスのベーシストの腕前が確かなことを感じさせる。作曲家の理念と演奏者としての情念。この2つの葛藤の中でミンガスのジャズは火花を散らします。ここに参加しているトロンボーンのジミー・ネッパーも殴られて顎の骨を折ったという逸話が残っている。荒くれ者を束ねる親分肌のジャズです。マイルスがギャング的な統率力がとれた組織だとして、ミンガス一家は個性を全面的に出していく。
ここでもShafi Hadiというサックス奏者の暴れぶり。無名のミュージシャン。。ハンク・モブレーと共演したこともあるブルース系のサックス奏者のようだ。何ぜ名前を変えたのか。権利問題があったのでしょう。治外法権的な手を使うのがミンガスです。
それにしても知られていない新人を集めてのこの演奏力の高さです。それはミンガスがジャズ・ワーク・ショップという道場を作って鍛えていたからです。ジャズは個人の即興性がものをいい、センスの塊同士のセッション的なものもありますが、一人のリーダーが確かな個性を引っ張っていくというスタイルもある。その代表例がミンガス・ワーク・ショップの個性派の面々。
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