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シン・現代詩レッスン55
ボードレール『秋の歌』永井荷風訳
永井荷風訳『珊瑚集 仏蘭西近代抒情詩選』から、ボードレール『秋の歌』。初心に還ってボードレール。やはりこのへんの近代詩が好きなんだよな。
吾等 忽ちに寒さの闇に 陥らん。
夢の 間なりき、強き光の夏よ、さらば。
われ既に聞いて驚く、中庭の敷石に、
薪を投げこむかなしき 響。
永井荷風の文語詩は近代を感じさせる。ちなみにルビは本に則って付けたもので永井荷風が付けたのではなく、岩波書店の編集者が付けたと思われる。永井荷風は文語だけどわかりにくということはない(詩的言語的わかりにくさはあると思うが)。この詩は昨日作った「暗渠」に使えそう。
もののけはたちまち暗渠に閉じ込められてしまった。
闇の中で空想するのは「春の小川」の歌声、恋人よ、歌ってくれるな。
もののけは敷石のしたの暗渠の川に流され
轟轟音が響くのだが、誰も聴いてはしない。
誰かが線香を投げ入れた。
そんな光で成仏できるか!
ジュッという音ともにたちまち暗闇。
やっぱボードレールとか荷風に近い感性なのかもしれぬ。
われ 戦慄きて薪を投ぐる響をきけば、
断頭台を 人築く音なき音にも 増りたり。
重くして疲れざる戦士の 槌の一撃に、
わが胸は崩れ倒るゝ城の 観楼歟。
二連飛ばして三連。ここでも引き付ける言葉が出てくる。最後の観楼歟は荷風の用例しか出てこなかったが漢詩の引用だろうか?物見台だよな。
墓石の蓋は閉じられなんの刑罰の罪人なのか
首切り刺客の一刀に
もののけは首を切られ、消え去るのみか、
鬼滅の刃の鬼 となって暗渠に沈む
断頭台は入れたかったな。ベルリオーズとかの行進曲風?
かゝる懶 き響に揺られ、揺られて、 何処にか、
いとも 忙しく 棺の釘を打つ 如き………そは、
昨日と逝きし夏を葬る声にして、秋来ぬと云う怪しい 此声は、
さながらに死者を葬る鐘にも似たり。
舟唄で運ばれていく感じなのか。そのピチャピチャした音が鐘のようなのか?舟唄でも八代亜紀ではない。そっちに変更できたら面白いが。
濁流に巻き込まれて、転がり、転がって、 何処にか、
排水溝の外から夕陽が差し込み、夏を葬る秋の風、
風に揺られてもののけの 此声は
さながら月に吠える遠吠えの如くに
肢体は散らばり赤潮となりゆく。