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シン・短歌レッスン148


NHK短歌

枡野浩一さんが選者、今回は「おめでとう/おしあわせに」。ゲストは校正者の牟田都子さん。司会は尾崎世界観さん。ことばのバトンは「光る君へ」でお馴染みのあの人!

なんかNHKは尾崎世界観が芥川賞を取る感じで番組を作っているのか?と感じられる、テーマとゲストだった。

今回は素直に「おめでとう」を表現する歌が少なく、捻れた歌が多かったという。短歌が逆説表現を好むゆえなのか、なかなかこの年になると素直に「おめでとう」を言いにくいと感じる。

おめでとう 誕生こそが死に至る病そのものなのだとしても 佐々木あらら

誕生日おめでとう 今日も好きでした あしたもきっと好きだと思う 枡野浩一

突然の、『アデンアラビア』二十歳の瞬間に(はたちのときに)おめでとうの君の言葉は、美 宿仮

誕生日におめでとうを言われて一番うれしかったのは、それが異性だったからでその瞬間だけは、主人公だったような。『アデンアラビア』でなくジャズのレコードだったのだが、そのタイトル曲が後の人生を決定ずけるなんて。

<題・テーマ>大森静佳さん「迷い」(テーマ)、枡野浩一さん「いただきます/ごちそうさま」(テーマ)
~9月2日(月) 午後1時 締め切り~
<題・テーマ>川野里子さん「飛行機」、俵万智さん「数字を入れる」(テーマ)
~9月16日(月) 午後1時 締め切り~

百人一首

今日は『NHK短歌 2024年8月号』のテキストからよさそうな歌を


51 草ふかき富士の裾野をゆく汽車のその食堂の朝の葡萄酒 若山牧水

牧水の酒飲みの歌。葡萄酒というのが避暑地のおしゃれさを感じる。牧水じゃないみたいだな。

和歌では四季の経過というか、季節の移り変わりを詠む方が名歌なのかもしれない。「ほととぎす」は夏の季語だが恋を待ちきれず鳴いているという感じか?

52 天井を打ちつつ狂う蛾の翅音くらがりに寝てがんじがらめなり   森岡貞香

森岡貞香は以前に上げたかもしれない。上げていたらこれと入れ替えたい。

53 赤き玉とろりとできてこぼさなかつた泪のやうな線香花火 梅内未華子

「巻頭秀歌」は写真込みだから短歌がよくわかる。また選者(米川千嘉子)の力量もあるのかもしれない、みんな良く思えてしまう。これは直喩の歌だけど「やうな」という旧かな。「泪」の漢字がいいのか?大した歌でもないと思うが、というかセンチメンタルすぎるかもと普段は思ってしまう。

54 水中では懺悔も口笛もあぶく やまめのようにきみはふりむく  工藤玲音

工藤玲音も上げたかもしれない。好きな現代歌人だった。新かなだな。これも直喩の歌だ。短歌は直喩はいいのかもしれない。

55 地下道を上り来りて雨ふる薄明の街に時の感じなし 土屋文明

これも米川千嘉子選で「上り」と「下り」を読むから。土田文明よりも選者の方が気になる。 

馬場あき子が師匠だった。夫が坂井修一なのもポイントかな。

56 こんこんと外輪山が眠りをり死者よりも遠くに上りくる月 浜田到

浜田到も前に上げたかもしれない。月の歌はコレクションしたいぐらい好きだった。選者は辻井一展。

「下り」はいまいちだな。マイナス作用が歌が作りにくいのかもしれない

57 どうしても思ひ出せない名の人と猫又坂の闇夜を下る 大西久美子

最初は「いっしょに」にしたのだが、「闇夜」にすることで物語性が出てくる。

58 くれなゐの涙にふかき袖の色あさみどりとや言ひいしをるべき  夕霧「少女」 

俵万智の会。テーマは色だった。紅の涙というのは血が混じっているような涙。赤と緑とか、村上春樹の小説かとも思うがそういう対比表現(反対色)が見事ということだった。

59 白き鯉のすぎゆく膚にかたはらの鯉の緋色のたまゆら映えつ 田谷鋭

これも白と赤の対比。白は動で赤は静なのもポイント(なかなか難しい歌だ)。俵万智は読み手としても優れているのだな。

60   キッチンへ近づかないで うつくしいものの怖さはもう教えたよ 山木礼子

 大森静佳選。「生きているからこわい」がテーマ。

61 赤鶴がふるき真蛇の面起(おもてた)ちあゆまむとせり爆心地まで  水原紫苑

さらに続けることにする。これは難しいな。能の面だという。「赤鶴」は伝説的な面打ちで彼が作った「真蛇の面起」が蛇の起きる姿が原爆雲のようだと、そこに歩いていく怒りを表現しているという。説明されなけらばわからないが水原紫苑の独自の短歌世界。

62 閉じたままのピアノもすこしずつ狂う 口紅の輪郭整える 川口慈子

現代短歌っぽい感じか。ここまで。


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