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シン・短歌レッス91
京都行きの電車に乗ったが京都は通過駅だった。もう何十年も京都に行ってなかった。京都といえば自分の中ではお寺巡りよりもジャズ喫茶。
ベンチャーズよりも、『二十歳の原点』の高野悦子が「しあんくれーる」で聴いたというスティブ・マーカス。
紀貫之の和歌
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『古今集 秋歌下』の紀貫之が9月の末日に秋の締めくくりとして詠んだ歌。「小倉の」は「をくら(し)の」で掛詞「暗い」という意味であり、鹿の姿ではなく鳴き声(雄が雌を誘う)であり、しっとりと去りゆく秋を詠んだ歌。その次が同じ9月の晦(つごもり)に詠んだ凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)の歌。
道しらばたづねもゆかむもみぢ葉をぬさとたむけて秋はいにけり 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
こっちは女の元へ通った道も秋(飽き)てしまったという歌。
女性とジェンダーと短歌
『女性とジェンダーと短歌―書籍版「女性が作る短歌研究」』水原紫苑編集。別稿。
葛原妙子
稲葉京子『鑑賞・現代短歌二 葛原妙子』から十首。
アンデルセンその薄ら氷(ひ)に似し童話抱きつつひと夜ねむりに落ちむとす 『橙黄』
南瓜の種煎りて与ふる夜長なりさびしきいくさのことは銘せよ 『橙黄』
竹煮ぐさしたしら白き日を翻(かへ)す異変といふはかくしづけきか 『橙黄』
十月の地軸しづかに枝撓む露の石榴の実牽きてあり 『橙黄』
灰色にけぶる猫よまなこ青みしづかにきたる春の燈のもと 『橙黄』
サラブレッド種嘶きたかくふるはする大気の冷えのむらさきを感ず 『橙黄』
奔馬ひとつ冬のかすみの奥に消ゆわれのみが累々と子をもてりけり 『橙黄』
わがうたにわれの紋章のいまだあらずたそがれのごとくかなしみきたる 『橙黄』
橙黄色の花筒(くわとう)仄明かる君子蘭昏れながき微光を背後に持てり 『橙黄』
青銅の小さき時計が時刻む恐れよ胡桃は濃き闇に垂れ 『橙黄』
「アンデルセン」の歌は初期の疎開時代に浅間山から吹く風が津波かと思うぐらいの恐ろしさでアンデルセン童話を抱きながら眠ったという歌。アンデルセン童話が「薄ら氷」に喩えられるのはその冷酷ゆえの物語なのか?
戦時中の食糧難か?「いくさのことは銘せよ」に厳しい言葉の意味がある。
「竹煮ぐさ」は夏草。「異変といふはかくしづけきか」は戦争が終わった静けさだという。「しらしらに白き日」は白旗のようだ。
「十月の地軸しづかに」という歌いだしの大きさだという。月から始めるのはありだな。「石榴」という鮮やかな植物の実が引っ張られているのである。
「灰色にけぶる猫」はペルシャ猫か?ここでも「しづかに」
だった。泰然たる姿か?
「サラブレッド種」「嘶き」は「いななき」か?難し漢字にはふり仮名が欲しいよな。馬のいななきが大気を震わすという歌で「むらさき」というのが高貴なイメージか?
「奔馬」は三島由紀夫の小説。もうそのあたりから苦手な部類だが、「累々と子をもてりけり」がけっこう凄いかもしれない。何たる母性!敗戦後ということを考えると凄いが、これの子というのは文学(短歌)のことだという。短歌への自覚。これは葛原妙子の代表歌に上げられていた。
「わがうたに」は前の歌を受けて「紋章」となるのだが、このへんの歌が「紋章」だったとは彼女はこの時点では気づいていたのだろうか?「われの紋章のいまだあらず」は反語ということだ。すでにこの歌が「紋章」となることを知っていたのだ!
「橙黄色の花筒」は献花を添える筒ということ。君子蘭というのだから大したものなんだが、今では開店祝いの花となってしまった君子蘭である。
「青銅の」は定形なんてクソ喰らえ的な感じがするので結構好きかもしれない。そうした不定形なのは不安感の現れかもしれないという。胡桃が闇の中に垂れているというのは、そうとういいかも。まだ割れていない闇の胡桃。その時刻になると割れるのだろうか?
NHK短歌
ゲストがベッキーだった。ベッキーもいつの間にか子供が二人いるという話だった。ベッキーの子育て体験から選者の山崎聡子が作った短歌が素晴らしかった。
泣いていた鬼はわたくし鶏肉をつぶして子供の口に押し当て 山崎聡子
児童虐待に思える短歌だが、子育ての苦悩が表現されている。鶏肉は離乳食のときに子供に与えるものだそうで、それを食べてくれない子供の口に押し込むという辛さ。まあ、外からみればなんてことをしているんだになるのだが。
あとベッキーがポジティブだけじゃ生きていけないと言っていたのがやっぱ母親として成長しているなと。
NHK短歌投稿<題・テーマ>
川野里子さん「天」
山崎聡子さん「友だちのこと」(テーマ)
~9月18日(月) 午後1時 締め切り~
https://www.nhk.jp/p/ts/JM12GR5RLP/
うたの日
「いつも」これだけで「いつもいつも」と出てきてしまいそうだ。
『百人一首』
心にはいつも隠している刃(やいば)うき世に向ける歌あるならば
♪二つだった。めげずに続けていくしかない。
映画短歌
『ハズバンズ』
『百人一首』
野分跡源氏亭はあれにあれ龍田の川に浮かぶ死体は