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ソ連革命直後のトルストイ作品の映画化

柳下美恵のピアノdeフィルムvol.10『セルギー神父』(1918年/ロシア/106分)原作:レフ・N・トルストイ/監督:ヤーコフ・アレクサンドロヴィッチ・プロタザーノフ 出演:イワン・モジューヒン、ナターリヤ・リセンコ、ウラジミール・ガイダロフ

帝政ロシア映画を代表するプロタザーロフ監督が文豪トルストイの原作を忠実に映画化した代表作、批判的リアリズムをロシア映画にもたらしたとして映画史に輝いている。モジューヒンとリセンコはモスクワ芸術座出身、主演のモジューヒンはこの作品で一躍スターになった。帝政ロシア期には、王室、教会、修道院などをモチーフとした映画製作は禁じられていたが、1917年の2月革命で帝政ロシアが崩壊し、撮影された。
1800年代半ば、ニコライ1世統治下のロシア。近衛士官のカサツキーはコロトコフ伯爵の娘メリーと婚約したがニコライ1世の愛人である事を知り愕然とする。俗を捨て修道士になり、やがてセルギーという名を授かる。山深い僧院に移ることを願い出て数年が過ぎたある日、地主のマコーフキナがセルギーを誘惑する。(ロシア映画社解説より改編)

ソ連時代の無声映画。それも革命一年後だからトルストイの原作よりも革命路線であり無神論的だった。前半眠ってしまったので近衛士官時代のセルギー(まだその名前ではなくカサツキーという名前だった)はよく分からず。

神父時代のセルギーになって、女が誘惑しようとするが指を切りそれで欲望に耐えて、再び女に誘惑されそうになると斧で殺そうとするが修道士がいて出来ずに教会を出るのだった。乞食坊主のようなことをするが憲兵に捕まってシベリア送りになる。

それはソ連では宗教はアヘンだということと働かざるもの食うべからずの思想なんだよな。トルストイは教会の神父は本当の宗教ではなく村人の中に溶け込んでこそと思っていたらしいのだが、ソ連ではそれは認められなかった。今ではトルストイの思想を伝える映画だとされているが、当時では宗教色が強いのでボイコット運動も起きたという。後で解説を聞いて納得した。

また監督も主演のイワン・モジューヒンもその後は亡命したそうだ。ソ連も映画が過渡期時代のもので、芸術としての映画よりもソ連の社会主義を体現する映画が求められたということだ。最後の不条理も、最初の士官時代が許しがたいから、シベリア送りになって当然ということなんだろう。

映画としては主演のイワン・モジューヒンの士官から乞食神父になるまでに変化する容貌の変化だろう。言葉なくして顔の表情だけで苦悩を表現していたと思う。最後のシベリア送りがなんとも不条理だが。


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