ヨイクの叫び
『サーミの血』(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク/2016)監督アマンダ・シェーネル 出演レーネ=セシリア・スパルロク/ミーア=エリーカ・スパルロク/マイ=ドリス・リンピ/ユリウス・フレイシャンデル
北欧の少数民族サーミ人の悲劇。日本のアイヌにも似ている。長身で白金のスウェーデン人から観ればサーミ人は小太りでモンゴロイド系。日本人とも近い。そんなサーミ人は野蛮人と差別されている放牧民。トナカイを育てている。遠吠えのようなヨイクという歌。
差別されている側の少女もそうしたサーミ人の血から抜け出したいと思っている。スウェーデン人に対する憧れとサーミ人であることのやりきれなさ。保護地区での白人優越主義の世界で言葉を去勢されていく。歌だけは彼らの癒やしとなるのだろうか。引き裂かれた世界で自我に目覚めていく。
エゴイズムの問題と共同体とそれをさらに覆っていく世界の中で。どこまでも少女から老婆になった女のヨイクが木霊する。亡き妹を呼び覚まさす為に。そういえばここでも妹の死はキリスト教で埋葬されてしまうのだ。その前にキリスト教への帰依も描かれていた。