マッチ一本歌事のもと(第六話)
これまでの物語
歌会始め
オレはフミコの言われるがままに放課後部室に行くと学年が同じ一年の柳棚国男に手招きされた。
「フミコを部活を辞めるんで、お前を指名だってな」
「………フミコが部活を止めるって、どういことなんだ!」
「部活だけじゃなく学校を辞めるんだから、家庭の事情だろう。貧困家庭とか?」
「フミコの家は金持ちだぞ。それにオレのメールにはそんなことは書いてなかった!」と修一はメールを見せることに。
「ふーん、なるほどね。お前らいつの間にそういう仲だったんだ。これは別離の歌じゃねーか?」と国男。
「言っていることがさっぱりわかん、フミコは学校辞めてどうするんだ。この歌会は?」
「オレがお前以上のことを知るわけあんめえ?知っているのは今回の歌会にお前がフミコの代わりに副将で短歌を詠むということだけだ」国男はそう説明すると共に歌会のルールとその後は相手のお嬢様女子校と交流会だと説明した。
女子校かと修一はときめいた。すかっり頭の中は女子校との交流会のイメージで歌会には気が回らなかった。部員たちの敵意の視線にも。どうもオレが副将なのが許せないらしい。国男が先鋒だという。国男の説明によると顧問の尺八(釈青空)先生も了解済みで、だから修一が副将なのだという。
そして顧問の尺八がホワイトボードにメンバー表を書いた紙を貼った。そのときの部室はどよめいた。一斉に部員の目が修一に向けられた。オレは我関せずとなったのもそれ以上にフミコの実情を知りたかったので釈先生に質問した。
「あのー、オレのことはどうでもいいんですけどフミコは何故来ないんですか?」
「あの落ちこぼれはそもそも必要がなかったのじゃ。たまたまお前が代わりに入ったに過ぎん。これは正式な歌会ではないんでな!」と尺八が言う。
「だからフミコはどうなるんですかと聞いているんじゃい!」とオレ。
「バカタレ!落ちこぼれ生徒のことなんてわしは知るか!ここは高校で義務教育ではないんだ!それに我が短歌部は伝統校として………」その後に延々話は続いたがどうでも良かった。オレはフミコにメールした。返信が来たのは歌会開始5分前で修一は短歌を復唱しているときだった。
これはフミコとの共作と言ってもいい。そのぐらいの気持で暗唱していた。国男が側に来てオレの歌にいいねをするように親指を立てた。その時メールの着信が鳴ったのだ。
オレはメールの意味がさっぱり理解出来なかった。国男がフミコには虐待する兄がいて、いつも痣だらけだったと言う。そして、歌会が開始されようとしていた。先鋒の国男に導かれるままに修一は教室に入った。
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