月連句
一月
五円玉賽銭前に月覗く
狼月も監獄ガザの黙示録
戦闘機月を曇らす爆撃か
ウクライナ赤い半月血膨れて
狼月ひたひたと我に迫りたり
狼煙見て戦場(いくさば)へ行く狼月
2月
飢餓月の闇に埋もれた髑髏
雪の月君の白髪輝いて
銀幕の地下シアター雪の月
三日月や亡き人思う姨捨山
月見酒夜寒の屋台うどん食う
3月
芋虫月わらわら集会ケムンパス
新月や迷い猫町裁判所
粗大ごみ無月なる日にア太郎よ
立ち止まり曇り空から隠れ月
月影をまたいで通る弥生かな
4月
新月の路上ライブ無我夢中
ガス燈よ月より綺麗白雪姫
月鏡卯の花腐し井戸の底
5月
満月にイタコ呼びだす五月祭
満月の妊娠検査薬は陰性
手毬唄花の月へと夜空へと
かぐや姫桃色吐息 月御殿
6月
月追いの「ストロベリー・フィールド・フォーエヴァー」
永遠と睨み合うかな月と陽と
遠い月ライブの客照らすかな
桂男仰ぎ見る月「パーフェクト・デイ」
終電のルーブル・ダッシュ月天心
7月
牡鹿月バッククラッシュ角落とし
月光の祈りの象は檻の中
こんこんと月夜は寂しい狐憑き
ラアラアと月に管巻く中也かな
砂浜に月下の恋人「金色夜叉」
8月
満月の海に生まれて海月かな
名月も月並みの句もみな同じ
柔らかな月見団子は言葉だけ
名月や風邪で寝込んで月知らず
満月に髪を結んで祈祷する
9月
新月や大道芸の野毛小路
新月やピエロは月を消したまま
新月や深爪痛く野分あと
十五夜の月に疲れた夜更かしさん
十三夜アミメキリンの舌の先
立秋の月を追いかけマメを得る
敬老の月スマイルカットに苦い顔
10月
十月の月は忌む神十字架に
神無月狐と踊れ月を狩る
神殺しツクヨミ隠す古池に
月抱く蛙は水に沈みけり
古池にかわず飛び込み月兎(つきうさぎ)
苺月少女は窓に腰掛ける
11月
赤ワイン月食領主に勧められ
三日月や終電に遅れ苦笑い
月光が増すほど走る静電気
寒月や缶カラころころ転げたる
12月
こいこいと坊主呼び込み月見酒
とくとくと盃に月飲み干すか
月読命はひとり照らしてクリスマス
月照らす黄金の木の葉を揺らす
餃子月酔ひを冷ましてラーメン屋
セロニアス・モンクのピアノ月歩き
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