インスタの裏側のダークファンタジー
『ハッチング―孵化―』(フィンランド/2022)監督ハンナ・ベルイホルム 出演シーリ・ソラリンナ/ソフィア・ヘイッキラ/ヤニ・ヴォラネン/レイノ・ノルディン
解説/あらすじ
北欧フィンランド。12歳の少女ティンヤは、完璧で幸せな自身の家族の動画を世界へ発信することに夢中な母親を喜ばすために全てを我慢し自分を抑え、体操の大会優勝を目指す日々を送っていた。ある夜、ティンヤは森で奇妙な卵を見つける。家族に秘密にしながら、その卵を自分のベッドで温めるティンヤ。やがて卵は大きくなりはじめ、遂には孵化する。卵から生まれた’それ’は、幸福な家族の仮面を剥ぎ取っていく…。
母親がインスタ・ママでそれに反抗も出来ずにいい子でいる娘がネガティヴな感情で卵を育ててしまうホラー。もう少し小さくE.Tだったら良かったのか、まあこの母では悲劇しかないだろう。表の華やかさとは裏腹に醜いものを排除するヴァーチャル(インスタグラム)世界であり、娘の感情に忍び込む負の感情は悪夢の世界なのだ。怪鳥の造形がいい。
醜さの中にあって、ときどき可愛いふりをする怪鳥が愛おしくなる。それは母親の心のグロテスクさと対称的だった。母親役の役者の漂白された微笑みが怪鳥以上に怖さを感じる。怪鳥は嫌われっ子だから悲劇になってしまったが回りがもう少し優しければペットとして飼うことが出来たかもしれない。それもある意味不幸か。
フィンランドは、おとぎ話的なファンタジーをダークファンタジーに変えるのは得意なんだろうか?『本当は恐ろしいグリム童話』とかいう本もあった。倉橋由美子『大人のための残酷童話』とかのパターン。
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