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李白のファンタジー(酒と男と女と山の月)

『李白 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典』 (角川ソフィア文庫)

李白、字(あざな)は太白。中国を代表する世界的大詩人。酒を飲み、月を愛で、鳥と遊び、自由気ままに諸国をめぐり、好きな詩を書いていた李白は、天界から地上に流されてきた仙人だといわれ、「詩仙」と呼ばれています。世の中への不平不満を歌ってくれる代弁者として民衆から愛された李白の詩は、日本をはじめヨーロッパでも愛誦され、今もなお輝きを増しています。豪快奔放に生きた、李白の浪漫の世界を味わい楽しむ一冊。
目次
故郷・蜀時代の作
青雲の志を抱いて出仕するまで
宮廷勤め・長安にて
再起を求めて漫遊する
安禄山の乱後
其の他(編年不明)

故郷・蜀時代の作

李白は蜀の出身。蜀で道教などの神仙思想(山岳宗教で日本の修験道か)が流行ったという。「蛾眉山月歌」。李白が長安に向かうために故郷「蛾眉山」を離れる時の歌。峨眉山から三峡(ダムで有名な)に向かう。楊貴妃の眉が蛾眉だったとか。美人の喩えなのかもしれない。

青雲の志を抱いて出仕するまで

「蜀道難三首」
都長安(山西省)から蜀(四川省)に向かう道の一つでかなりの難山の道。その喩えがファンタジーっぽくて面白い。李白得意な拡張表現。蜀から4万8千年って、中国5万年の歴史なのかと思う。神話時代なんだ。百歩行くのに9回折れ曲がりという表現とか、面白い。十歩で一回折れ曲がるとかどんな道だ。

宮廷勤め・長安にて

「子夜呉歌四首」は六朝時代の呉を歌った民謡を李白が詩に書き換えたもの。四季の季題ごとに、民謡調の詩、子夜という女性が歌ったのだとされる。夏に西施がうたわれる。芭蕉の句に西施を詠んだのがあった。

象潟や雨に西施がねぶの花 芭蕉

傾国の美女とされるのだが、元は農民で蓮を積んでいたとされるが蓮根は半ティグの意味があり趙王が呉王を倒すためにスカウトされた美女だったとか。その時の様子の歌だとか。秋は砧の打つ響で日本でも「秋思」の歌でよく砧が取り上げられる。秋の名歌として有名。冬も戦場に行った夫のために衣服を縫う女性の歌。「子夜呉歌四首」は働く女性にスポットを当てた民謡だということだ。李白は働く女性の歌が多い。

「清平調詞三首」。楊貴妃を牡丹に喩えて歌ったが、傾国の美女、漢の飛燕と比べたので、そのことが玄宗皇帝の怒りを招き宮廷歌人から追放される。李白は傾国の美女好きか。

「古風其の五」
道教の神仙思想の詩で、不老長寿を求める。『源氏物語』を翻訳したイギリスのウェイリーは「李白」では道教の李白について書いている。

再起を求めて漫遊する

「魯郡東石門杜送二甫」
李白が杜甫と「男友情を歌う」というのは西欧の同性愛的な関係ではないと吉川幸次郎が言ったとか。ただ李白はその前に孟浩然にも詩を捧げているので杜甫だけが特別ではないと思うのだが、杜甫の方が友達も少なく李白のおおらかな印象が強いのかな。社会の不合理について鬱憤を酒を飲んで晴らしていたということではないのか?

次の「将進酒」でも酒飲み友達に捧げた詩で豪快な飲みっぷりを民謡調に歌ったもので、李白はそういう詩人だったと見るべきなのだろう。酒飲みを称える詩。そうか、大伴旅人と山上憶良の姿を李白と杜甫に重ねているのかもしれない。

「古風其の五」
胡蝶の夢の詩。李白が詠んでいると酒飲みが前後不覚になってもう自分だか他人だかわからなくなっている状態かも。それを詩として解釈すると人生哲学みたいな話になっていくようだ。

「哭晁卿衡」遣唐使の阿倍仲麻呂を詠んだ詩。日本に帰る途中で船が沈没した悲しみを詠んでいた。実際は助かって生きていたのではなかったか。

安禄山の乱後

唐の詩人は安禄山の乱を描いているのだが李白「北上行」は実際に出会ったのではなくニュースとして情報を得て先人の詩を真似て作っていた。「横江詞六首」は山水画に描かれるような土地に避難する。その時に貧しい農民の家に避難し食事を与えられ感激した詩「宿五松山下荀媼家」を残している。

其の他(編年不明)

「静夜思」は望郷の詩として有名。李白は望郷と月を詠むことが多い。またそれは秋の夜長とかの詩が日本でも人気の秘密だろうか。また美人を詠む詩も多いという。


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