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アイドルから観音菩薩へと変身小町

『小町はどんな女(ひと) 『小説 小野小町 百夜』の世界』髙樹のぶ子

ひたむきに、一途に生きた、小町の美しい人生――

小町の歌を手掛かりに紡がれた物語『百夜』
とともに、平安の「雅とあはれ」をたどる旅

「彼女の率直で必死な言の葉が描き出す真(まこと)の姿は、芯の強い、自分に率直な女性です。哀しみを友としながらも毅然として愛を全うした人。

 私の中では、大きく豊かな女性として成長して行きました。
 多くのしがらみや宿世(すくせ)に翻弄されながらも、最後まで自尊心を保ち、自らの心に忠実に生きた女性の、なんと魅力的なことでしょう。

 私はぐいぐい引っ張られながら、小町の人生にのめり込んで行きました」
(本文より)
目次
第1章 私の中の小町
第2章 小野小町の人生(母・大町との別れ 雄勝・多賀城;父親との融和と理解の場 六道珍皇寺;小町の能力 神泉苑;愛の真実を知る場所 雲林院;桜を扇に乗せて思いを伝える 仁明帝深草陵;竹林と愛の悲劇 欣浄寺;小町は惨めに年老いたのか;山科の花と雪の里 随心院;平安時代の婚姻関係;香は男と女を結ぶ;業平と小町の出会い 慈恩院;魂を鎮めるところ 下出雲寺;父・篁との和解 笛を吹くということ;小町の歌の変遷;母恋い;鄙と都;出家というもの 石上寺;平安時代の暮らし)
第3章 対談 叶わぬところにあはれがある―〓樹のぶ子×歌人・小島ゆかり

髙樹のぶ子『小説小野小町 百夜』のための小野小町についての下調べの紀行文(ガイドブック的な)と小町の歌の解釈について。

『古今集』は紀貫之の編集意図があり、恋の歌連ねて並べていた夢の歌は「母恋ひ」という。それは小町が個人の恋だけではなく、愛について歌っていたというのが興味深い。

またそれまでの小町のイメージは男性視線で作られたもので、若い時はブイブイ言っていた女は年取って憐れになるという能『通小町』『卒塔婆小町』という男性の作られたイメージから、小町の歌本来の中でイメージを広げていくという解説がなされている。

その中で小町に恋するあまり百度通いの深草少将や六歌仙の遍昭との恋や業平とは歌人としての尊敬し合う仲だったという話は興味深い。また小野篁を小町の父として父との葛藤があったとか(フィクションだけど)。小説に繋げた話は面白い。髙樹のぶ子が描きたかったのは、待つしかなかった平安時代でもっと強い女性、母性的という感じなのかな。許しの思想みたいなものは仏教に繋がっていくのか?

小島ゆかりとの対談は圧倒的に小島ゆかりの小町の知識に負けている。歌人ならではなのか、小島ゆかりの話は和歌の歴史から小町の重要性と和歌の時代の流れがよく理解できるように話している。この対談はより和歌の世界を深めるのに興味深い話がいくつかあった。小町がいなければ『源氏物語』の「もののあはれ」もなかっただろうとか。

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