アイドルから観音菩薩へと変身小町
『小町はどんな女(ひと) 『小説 小野小町 百夜』の世界』髙樹のぶ子
髙樹のぶ子『小説小野小町 百夜』のための小野小町についての下調べの紀行文(ガイドブック的な)と小町の歌の解釈について。
『古今集』は紀貫之の編集意図があり、恋の歌連ねて並べていた夢の歌は「母恋ひ」という。それは小町が個人の恋だけではなく、愛について歌っていたというのが興味深い。
またそれまでの小町のイメージは男性視線で作られたもので、若い時はブイブイ言っていた女は年取って憐れになるという能『通小町』『卒塔婆小町』という男性の作られたイメージから、小町の歌本来の中でイメージを広げていくという解説がなされている。
その中で小町に恋するあまり百度通いの深草少将や六歌仙の遍昭との恋や業平とは歌人としての尊敬し合う仲だったという話は興味深い。また小野篁を小町の父として父との葛藤があったとか(フィクションだけど)。小説に繋げた話は面白い。髙樹のぶ子が描きたかったのは、待つしかなかった平安時代でもっと強い女性、母性的という感じなのかな。許しの思想みたいなものは仏教に繋がっていくのか?
小島ゆかりとの対談は圧倒的に小島ゆかりの小町の知識に負けている。歌人ならではなのか、小島ゆかりの話は和歌の歴史から小町の重要性と和歌の時代の流れがよく理解できるように話している。この対談はより和歌の世界を深めるのに興味深い話がいくつかあった。小町がいなければ『源氏物語』の「もののあはれ」もなかっただろうとか。