『現代詩手帖2023年9月号』
現代詩について本を図書館で物色していたがこれと言った本がないのでを『現代詩手帖』を読んでみようと思った。生憎、今年の『現代詩手帖』は借りられていたので去年の『現代詩手帖』から読んでみよと思った。特集で富岡多恵子だったのが良かった。詩人としての富岡多恵子よりも作家としての富岡多恵子に興味があった。最初に読んだのが『表現の風景』で驚愕したのは身体障害者用のダッチワイフ(今はラブドールという)のレポートしていた記事。それから『釈迢空ノート』『男流文学論』『波うつ土地・芻狗』と読むほどに好きな作家になっていく。
伊藤比呂美の編集した富岡多恵子の詩は、観念語が少なく誰にも読めるが詩自体は単純ではなく奥深い。それは詩の形が常識を崩す問いになっているからだ。『返禮(返礼)』の愛についての詩は最後が決まっている。「嘔吐のこないひとりの胃痛の返禮(おかえし)」「嘔吐」はサルトルを意識していると思う。もう一つの特集「詩論のクリティカル」で中学生詩人としてデビューした文月悠光に興味を持った。中学生で詩人というレッテルを貼られてしまうことに対してかなり大変だったようだ。
アンソロジーを編集したのは伊藤比呂美でこの詩はいいと思った。富岡多恵子が観念語を使う詩人ではなく日常語で比喩も少ないという。詩そのものが比喩というのか問いなのである。
タイトルの漢字意外に難しい言葉はない。タイトルも旧字で書かれているから難しく感じるのであり、新字体では「返礼」だ。ざっと読んで「あい(愛)」のことを言っているのだろうと理解出来る。だがこの「あい」が難解だ。ただその決意書みたいな詩である。
「嘔吐」はサルトル『嘔吐』を意識していると思う。しかしそういうインテリじゃないから「嘔吐」なんてないと書く。それは胃痛の返禮 おかえしなのだ。