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舞台『咎人の刻印~ブラッドレッド・コンチェルト~』を終えて

誰一人欠けることがなかった現場。
一回も中止にならずに駆け抜けた千秋楽。
カーテンコールで万雷の拍手とスタンディングオベーション。
そして、主演お二人の涙。

関係者席にいた私はその時、全く泣かなかった。
いや、それどころではなかった。
胸に渦巻いていた重苦しい感情から解き放たれたような気がして晴れ晴れとした気分だった。
千秋楽後、担当氏と打ち合わせをしている時にふと理解したのだが、あの時私は、『咎人の刻印』という作品が一つの完成形を示したことに感動していたのかもしれない。
お客さまの愛に溢れた拍手と、演者さん達の愛の結束と、男の涙。
作品のテーマが、カーテンコールで回収されたのだ。
あまりにも美しい
泣かなかったのは、その感動に全てを持っていかれたからなのだろう。
舞台チームの皆さまに、この作品をお任せして本当に良かったと思う。

この作品を立ち上げた時の心情、1巻が2020年4月刊だった(第一回緊急事態宣言で大型書店の多くが休業を余儀なくされた)ため売り上げが絶望的だったこと、販促のために必死に動いていた日々。
思い入れが非常に強かったこともあり、執念にも似た感情をこの作品に持っていたのだと思う。
そのため、幸運にも舞台化の機会を頂いた時、作品にベタ付きで過干渉になってしまった。自分が行けそうな現場に出向いたり(舞台制作現場を取材したかった気持ちもある)、舞台を全通したりしたのもそのせいだったのだろう(勿論、舞台が素晴らしかったというのもある)。
「過保護にしないで!」という神無の叫びが胸に突き刺さる日々であったが、見届けないと悔いが残るという気持ちが後押しして、現場の皆さまのご厚意に甘えつつ(本当にお世話になりました)、過保護すぎる授業参観を続けてしまった。

その結果、自分にもたらされたのがロスでも感涙でもなく、解脱だった。
素晴らしい舞台チームの皆さまと温かいお客さまによって、自分に渦巻いていた異常なほどの執念から解き放たれたような気がする。
私もまた、他者の愛を観測することによって救われたので、私もこの作品の一部になれたのかもしれない。

それにしても、会期中にメディアミックス経験がある作家さんと色んな意見が共有できたのも良かった。
今回の舞台化を経て、作家として一段階成長したのだと思う。「メディアミックスは大変」と関係者が口を揃えて言う理由もわかったし、メディアミックスでしか味わえない喜びも経験した。
私は今回受け取ったものを大切にし、原作者としてやるべきことをやろうと思う。

余談だが、あのハチャメチャに痺れるOPで原作者として自分の名前が出るのが本当に嬉しかったのだが(映像作品のスタッフロールに自分の名前が載るのが夢だったので)、あのシーンの神無と御影の構図があまりにも美しくてガン見してしまうのでほぼ見逃している。
DVDが完成した際は、何度も眺めて感動を噛み締めたい。

関係者の皆さま、ご来場くださったお客さま、今回は本当に有り難う御座いました。

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蒼月海里
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