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『怪談売りは笑う』発売~同人アンソロジーから商業出版へ
角川ホラー文庫さんからデビューして10周年となった今年、同レーベルから20冊目の本を出すこととなった。
あの黒い背表紙が20冊である。
ここまで来られたのは、皆さまの支えがあってのことなので、心より感謝を申し上げたい。
著者と「ホラー」の遍歴
角川ホラー文庫で作家デビューしているとは言え、私は公募落選拾い上げの上、当時では珍しい「ほっこりホラー」でのデビューとなった。
著者本人としては、怖く書いたつもりだったのだが、いかんせん怖いのが苦手(だが妖怪と怪談は好き)ゆえに、ホラーとしては甘い作りになってしまったのだろう。
しかし、当時妖怪ものは絶滅危惧種(※一握りの作家さんしか企画が通らなかった)状態だったのと、「ほっこり」というフレーズを売りにする作品がなかった(※文庫担当の書店員だった著者は観測できなかった)ためか、うまい具合に市場にハマって、有り難くもヒットとなったのである。
作品が売れて多くの読者さまにお会いする機会が得られたのは非常に嬉しかったのだが、それはそれとして、怖くしたのに怖くないというのは不本意だったため、「ちゃんと怖いホラー」が書けるよう試行錯誤を続けていた。
その結果、他社さんで「怖い」という感想をもらえるホラーを書くことができ、単行本を経つつ角川ホラー文庫に戻ってきたのである。
本書『怪談売りは笑う』は、「怪しげな店主が怪しげなアイテムを売買して、購入者がひどい目に遭ったり遭わなかったりする短編連作」というクラシカルな作りだが、今の著者なりに、「怖さ」を入れつつ、好きな「妖怪」と「本」を詰め込んだ物語だ。
今まではキャラクター的な妖怪が多かったのだが、本書の扱いは異なる。
怪しげな店主という立ち位置の『怪談売り』の哀しい過去と併せてご堪能いただけると幸いだ。
『怪談売り』の初出は同人誌
さて、『怪談売りは笑う』に登場する怪談売りとライターの藤崎だが、実は本書初公開ではない。
「少女文学館」さん刊『少女文学 別館二号』に寄稿した『姑獲鳥の書』が初出となる。
こちらは「文学フリマ東京38」で大々的に頒布されているため、お手に取られた方もいらっしゃるかもしれない。
著者は怪談売りの話を五編紡いでおり、そのうちの四編を角川ホラー文庫さんへ、一編を少女文学館さんへお渡しした次第だ。
『姑獲鳥の書』は、『怪談売りは笑う』の第三話から第四話の間あたりの時系列の話なので、興味がある方は『少女文学 別館二号』をお読み頂けると幸いだ。
いずれも単品で楽しめる作りとなっている上に重複はない。
『少女文学 別館二号』で試しに一編読むのもありかもしれない。本書は錚々たるメンバーのアンソロジーなので、本として読み応え抜群だ。
今、出版業界の事情が激しく移り変わっている。
昔からの慣習が通用しなくなったり、従来の戦略が使えなくなりつつあったり、書店さんは年々減少してしまったりという状態だ。
そんな中、文学フリマが急速に盛り上がりつつある。
出版の市場は縮小傾向にあるが、濃い本好きさんはちゃんといるし、その方々は本と出会える場所にやってくるのだ。
著者がお世話になった「少女文学館」さんも含め、プロも個人で活動する場を持つ中、著者もまたこれをきっかけに、フレキシブルに手広くやりたいと考えている。
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