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日記 魚のように夢を見ていました。

 11月27日(水)

 10時起床。休日。晴れていたり、突如雨が降ったり、不安定な空。

 昨日から喉の調子がすこぶる悪い。なんとも言えない異物感。風邪のひき始めかしら、と思い漢方薬を飲む。体調不良はいやだ、自分自身がくるしいからいやだ。今日は夫が一日不在なので、思い切ってなーんにもしない一日とする。ベッドのなかで一日を過ごすことにする。おうち入院だ。毎日真面目に働いているのだから、たまにそんな一日があってもバチは当たらないはずだ。

 枕元にトレーを持ち込んで、寝っ転がったまま昼食兼おやつ。ワッフル、ソイラテ。つば九郎に見守られながら食べる。体調が悪くても食欲は減らない因果な人間である。我が家のつば九郎は日本一記念でトサカが金色になっている。黄金のとさか九郎、と私は呼んでいる。

 食べ終わったら本を読む。今日も百合子。つらつらと百合子。たまに『読書の日記』。薄暗いので、枕元のカーテンを開ける。雨の音がきこえる。下校中の小学生たちが騒いでいる。男の子が、走る〜走る〜俺たち〜と歌っている。なにか一枚隔てたところからきこえてくる。一日中ベッドで過ごしていると、薄くてあたたかい膜に守られているような気がしてくる。微睡む。

 ソイラテ以外ほとんど水分を摂っていないことに気付き、慌てて水筒に水出し茶をつくる。台湾烏龍茶春摘み。まだほとんど茶葉が開いていないうちからちびちびと飲む。トイレに行く途中、洗面台の鏡を見る。なんだか赤ん坊みたいなぽんやりした顔をしている。なにも考えていない顔。なにもしていない顔。

 冷凍庫にセブンイレブンの生チョコブラウニーサンドを温存していることをふと思い出し、一度思い出してしまうと、もう食べたくて食べたくて仕方がなくなってしまう。こんな体調のときに食べるものじゃないよなァ、ちょっと重たいよなァ、と思いながら、結局食べる。せめてもの抵抗で、白湯といっしょにゆっくりゆっくり食べる。Apple MusicでPaniyolo流しながら、本を読む。スマホをいじる。音楽を聴く。窓から入る光を見る。本を読む。うとうとする。布団を頭までかぶる。気付いたら暗くなっている。ひとりぼっちで白い壁の部屋で過ごしていると、尾形亀之助の詩が読みたくなる。よろよろと起きあがって本棚から持ってくる。もの静かで、とても淋しい。だけどほんの少しだけ光が射しているかのような言葉たち。淋しいという感情は今も昔も変わらないのだな、と思う。

太陽には魚のようにまぶたがない

尾形亀之助『昼』

午後になると毎日のように雨が降る

今日の昼もずいぶんながかった
なんということもなく泣きたくさえなっていた

夕暮
雨の降る中にいくつも花火があがる

尾形亀之助『雨日』

毛布に膝をつつんで
天井から部屋のまん中に垂れさがっている電燈の前に坐っているので
夜が屋根にすれすれに凝っているような気がする

煙草の煙はゆらゆらしている
私の膝はやわらかい
大きな声さえ出さなければ何時まで起きていても誰も叱りはしないだろう

尾形亀之助『火鉢のある部屋』

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