7月11日「風のクロノア1&2アンコール ー2のラスボスは何者なのかー」

「風のクロノア1&2アンコール」で遊んでいました。

ひさしぶりに1&2を通しで遊んだ私は今とっても

「風のクロノア2 ~世界が望んだ忘れ物~」のラスボスの話がしたいです!

(その結果、ここから先はほとんどネタバレです。昔のゲームであってもネタバレは嫌だというかたはお気をつけください)

2の話をするために軽く1の説明をします。

『風のクロノア ~door to phantomile~』クロノア1作目です。最初はPlayStation版で発売されました。

ぐりぐりの3Dレンダリングでありながら、横視点の2Dアクションというゲームの、はしりだったんじゃないでしょうか。

可愛いキャラクターとバラエティに富んだ音楽と背景、クリアするだけならそこまで難しくない難易度、みたいな良アクションゲームです。

「幻獣」とよばれる生き物がはびこりおびやかされている世界、ファントマイルの住民たちを、クロノアという少年? が「風だま」というアイテムを使って助けていくのが基本のストーリーになります。

夢の力で形作られているファントマイル。主人公のクロノアは、風の村ブリーガルというところに「じっちゃん」と一緒に住んでいます。

ある日森の中でみつけた不思議なリング――宝石付きの指輪に見えるが、クロノアからすると王冠くらいの大きさの金色の輪――に宿るリングの精、ヒューポーと出会いました。それから、ヒューポーとクロノアはいつも一緒でした。

「じっちゃん」と二人が暮らす家の近くの山で爆発音がひびき、クロノアはヒューポーと一緒に様子を見に行きます。

そこで、世界を悪夢に変えようとしているガディウスなる男が、少女をさらおうとしているところに出くわします。

少女は「再生の歌を歌う」といわれている歌姫、レフィス。彼女の力を悪用して世界をムチャクチャにしようとしているのです。

クロノアたちは持ち前の正義感で立ち向かい、世界中を駆け回ってガディウスの野望を阻止しようとしますが……

(この先ストーリーのネタバレになります)

敵たちはそのファンシーな見た目とは違い、冷酷で長い腕を持っていました。重要なアイテムを「じっちゃん」に預けたことを聞きつけた仇敵は、無慈悲にもじっちゃんの家を空爆します……

号泣するクロノア。なんとなく「慣れあい」のような関係だった敵との関係が変化します。少しずつハードになっていくストーリー。

各地をまわるなかヒューポーがじつは「リングの精」ではなく「月の国の王子」であることが判明したりします。ビックリしつつも受け入れるクロノアですが……

じつはヒューポーがクロノアに隠していたことは、これだけではなかったのです。

悪夢の根源を倒し、復興がはじまったファントマイル。クロノアとヒューポーは草原に腰掛けています。

「ヒューポー……月の国に帰っちゃうの?」

「……」

「でもまた会えるよね? また昔みたいに遊ぼうよ!」

寂しげに笑うクロノアにヒューポーは、ためらいながらも隠していた真実を告げます。

クロノアはこの世界の住人ではないこと。ヒューポーがこのファントマイルを救うために呼んだ「夢の旅人」だということ。

ヒューポーとの出会いやじっちゃんとの思い出は、その大半が、ヒューポーによって思いこまされていたかりそめの記憶だったということ。

その時、歌姫レフィスが「再生の歌」を歌い始めます。悪夢の影響を受けて枯れていた花が蘇り、ファントマイルのあらゆる場所があるべき姿に戻っていきます。

それは「夢の旅人」クロノア、異世界からの訪問者を排除する力でもありました。

泣きながら抵抗するヒューポーとクロノアでしたが、クロノアはリングごと引き離され、空間の外に消えていきました……

みたいな、なんともビターな結末でした。

その後なんどかスピンオフとして作られましたが、時系列としてのつながりはなく、クロノアが1作目のことを記憶していることはありませんでした。

そしてついに「風のクロノア2 ~世界が望んだ忘れ物~」が出ました。

機種はPlayStation2になり、グラフィックは大幅に強化されていますが、スピンオフ同様、クロノアは1作目のことを記憶していない、完全に別ストーリー上の登場人物として作られています。

「ルーナティア」という世界に、クロノアが別の世界から意識のないまま呼び出されるところから始まります。

クロノアの姿も1作目とは少し異なり、赤い服ではなく青い服になっています。

正直私は、ゲームとしては面白いけれども、ストーリーとしては「1」が衝撃的すぎたせいで、「2」のキャラクターたちにそこまで親近感を抱けずにいました。

なんというか、かれらもクロノアを「旅人」というつごうのいいヒーローとして酷使しているだけなのではないかと。

クロノア本人についても、キャラクターデザインも変わってしまっているうえ、あのファントマイルについても知らない様子。

「2」のクロノアについてけっして好感度が低いわけではないけれど、「1」と連続性したキャラとして受け入れられないでいました。

ですが、ストーリーの終盤、ついにラスボスが姿をあらわした時、「風のクロノア2」のいろいろなものが違う様相をみせはじめ、「1」に感じていた謎の部分も少し解明できた気がしました。

ラスボスの名前は「哀しみの王」。哀しみの国を作ったとされています。

クロノアと同じくらいの背丈。クロノアによく似た長い耳。クロノアのようにふさふさした毛でおおわれた身体は青く、クロノアよりはちょっと細身です。

首元には編み上げたチョーカー。形状は「1」のクロノアが付けていた赤い首輪に似ています。「2」のクロノアは付けていない首輪です。

「哀しみの王」の担当声優はクレジットも公式にもキャスト未発表ですが、おそらくクロノアと同じ方だと思います。

主人公とラスボスを「兼ね役」にしておいて、ふたりが「無関係」ということはおそらくないと思います。

じゃあ「哀しみの王」は何者なのか、いくつか推測できそうなものをあげていくと、

前作の主人公クロノア本人である』しんどい話にも関わらず非常にありそうな話です。「2」のクロノアはパラレル的な存在、「1」を体験しなかったクロノアという感じでしょうか。私的には「哀しみの王」の攻撃パターンがあんまりクロノアっぽく感じなかったので保留しています。

クロノアが封印した哀しい記憶などが具現化した存在』クロノアが記憶などをまとめて分離した結果、その哀しみが姿を持った、みたいな。これもありそうです。

巫女たちは「クレア様」という神を信仰して巨大な神像を建てているのですが、かつてクレアが自分の中の忌むべきものを分離したという言い伝えがあるそうです。これはこの説に非常によく似ています。

クレアとクロノアの類似点は登場キャラクターからの指摘もあり、その場合はクロノアは旅人というより、ルーナティアを創造した創造主なのかもしれません。

どちらにせよクロノア本人にはそのことを伝えることなく退場する、「哀しみの王」のくせにクロノアを哀しませたくないところ一本気があります。

ただ、メタ的に考えるともうひとつ候補があります。

「超えるべき1」として設定されたボス』です。

これはどういうことかというと、「クロノア」ってもともと「プレイヤーが操るキャラクター」くらいの設定だったんじゃないかって思うんです。

クロノアのほんとうの記憶とか、ほんとうの故郷についてはほとんど設定が明かされていません。1の最後で「君の現実ファントマイルに帰るんだ」ってヒューポーが言う通り、クロノアは仮の姿をしたプレイヤーそのもの、程度の設定だったんじゃないでしょうか。

だから毎回、全然別の設定に投入するつもりだったのではないでしょうか。じっさいアクションゲームの主人公なんて、「マリオ」筆頭にとくに過去作とのつながりはうすく、ゲームごとに違う設定になっていることなんて珍しくもなかったと思います。

ところが……2Dが3Dになって存在感が増したのと同じように、細やかなストーリーで語られるクロノアの存在感は、作り手が思っているよりも大きくなってしまったのではないでしょうか。

たとえばマリオも3Dになるにつれ、単なる動かす自機キャラではなく連続するキャラクターだと認識されるようになり、知らない国に訪れて知らない姫を救う、みたいなことがやりにくくなっているんじゃないかと邪推しています。

「1」の続編を求められているが、「1」は完全に完結したお話である。「2」は続編ではないまったく新しい話にしたい。

そんなせめぎあいの中で生まれた「1を象徴する、哀しい思い出」にケリをつけるために生み出されたのが「哀しみの王」なのではないかと思いました。

「風のクロノア2」の副題、「世界が望んだ忘れ物」にはそのあたりの意味が込められているのではないか、と思ったのですが、どうなんでしょう。

長々とオタク話、失礼しました。

以上、ここまで読んでいただいてありがとうございました!

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