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お父さんはくさい

今日はこの、私が持つ密やかな悩みについて話してみたい。


親は子供を見ている

私には小学生の子供が男女1人ずついる。
子供が小さい時は、私は小学校高学年ぐらいになったら「よく抱っこをしたなぁ……」と振り返る事になるのだろうと考えて、小さい時に子供に遊んでもらえる時間を大切にしようと考えていた。
しかし現実は、(これはきっと良いことなのだが)チャイルドシートもしなくていい様な身長だと言うのに毎日仕事帰りに肩車を要求されたり、抱っこをしたままぶん回したり、追いかけっこみたいな事をしている。

家族でボードゲームもするし、子どもの宿題も毎日確認している。
自分が過ごした平成初期の家庭のイメージとは随分違う生活をしているなと感じることも多い。
白状すると、20代や30代半ばまでのように長時間残業をしていたら家庭が回らないと言う実感がある。自分は、家に帰らない事が怖いのだ。

自分の親は絶対子供にこんなに構っていないと思うし、自分が子どもの頃よりも親の負担が増えている気しかしない。周りの親も、子供を放置して深夜まで残業して……と言う働き方をあまりしていないように感じる。
(私が、単に親に放ったらかしにされていたと言う説もなくはないが)
これは少子化になった分、子どもを大切にする様になったと言うことなんだろう、と思っている。
一方で、PTAを自由参加にして親も負担を減らそう、中学の部活も無くしてクラブ活動化して教師の負担を減らそう。そして、本来の役割に注力する。
そういう時代だ。
なので、父親の自分も当然子供との接触機会が多い。

子が親を生理的に嫌がるのは当然だとか

さて、娘が大きくなり思春期に入ると「お父さん臭い」と言われて嫌われたりするらしい──と言うことを、皆さんも聞いたことがあるだろう。私もある。

これは遺伝子的に近い人間を避けるためにそういうふうになっていると聞いた。ならば仕方がない。いずれそうなっても我慢しよう。
そう思っていた私だった。
小さい娘はよく抱きついてくる。我が子ながら可愛らしく、(両親の喋りベタと反して)よく喋り、よく笑い、他人の話に傾聴するのが上手い。

その娘が5歳になる頃、
いつもの様に抱きついてきた娘の異変に気がついた。

くさい!!

なんか!!

ぞうきんっぽい臭いがする気がする!!

……もちろん本人に言える筈もなかった。

お父さんはくさい?

私は妻に問いかけた。
「いいにくいんだけど、最近娘から嫌な匂いがする気がして」
「そうなの?ちゃんとシャンプー出来てないのかな?私も気にしてみるね」
と、こころよく返事をしてくれた。

念の為わたしはお風呂上がりに娘の匂いを嗅いでみたが、特に匂いはしなかった。良かった。たまたま運動場で遊んで、何かの虫でも頭に止まったのかもしれない。そう思っていたのだが、すぐに事件はおきた。

とある時、わたしはいつも通り布団に入り眠ろうとしていた。
いつも自分の匂いか、妻の匂いしかしないのだけれど、その日は布団から嫌な匂いが漂っていた。まさかと思い、翌日娘に「昨日ベッドに入った?」と聞くと、「うん」と言う返事が帰ってきた。

この事から確信した。
そう、君のお父さんは娘の匂いが苦手になってしまったのだと。
念の為、娘が抱きついてきたときに「お父さん変な匂いとかせん?」と聞いてみたりもしたのだけど、「いい匂いやよ?」と返事をしてくれた。
罪悪感がお腹の辺りを駆けた気がしたが、寝るのに支障をきたしているので、「親のベッドは親が寝る所なので、両親のベッドには入りこまないように」と伝えた。

お母さんはいい匂い

遺伝子的に遠い相手とは惹かれ合うと言う話があるが、うちの夫婦はお互いにお互いの匂いが好きだ。
恋人同士だった時から一緒に寝ているけれど、初夏から秋にかけては特に、汗臭い……というよりも、桃と例えるべきなのだろうか。なんだか果物のような匂いがする。そろそろ夫婦ともに若いとは言えない歳になるけれど、匂いは変わっていなくてそこは愛らしい部分だ。

一方で、過去にいた女性の中で、理性的に(恋愛の話を理性的に考えるというのも妙な話だけれど)考えると、とても素敵な人で好きになってもおかしくなかった、と言う人がいた。
ところが夏に漂ってくる匂いがどうしても無理で、だいぶ失礼な言い方になってしまうがゴミ箱のように感じられた。

くさいものはくさい上に治しようがない部分だろうと思われる。
また、他人に大っぴらに「いい匂いですね」と言う表明をするのもそれはそれでキモいので、他人と語ったりしても仕方がない部分だとは思う。
ただ、一緒に生活する人がくさいというのは由々しき事態なのは間違いない。

今年の夏は、特に屋外は暑い。どう家族のにおいと付き合っていくか。1人悩む日々がはじまったのだ。

逆に、将来「お父さんくさい」と言われた時に、「僕も我慢しとったんよ」と言い返せるのかもしれないけれど、そんな日がこない事を祈っている。
においの解決案は、多分ずっと募集中です。

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