花人になる時
花束を持った人とすれ違った。菊の花が目立つそれはきっとお供えするものであろう。白と黄色が暗い色味の町によく映えていた。
花束を持った人とすれ違った。全体的にセピア色のフィルターがかかったようなそれは、部屋に飾るドライフラワーだろうか。ガタイのいい男性は、肩に担いでぶっきらぼうな持ち方をしていた。照れくさいのだろうか。
花を指差して笑みを浮かべる女の子を見かけた。隣の女性は、女の子の目線に合わせて綺麗だねと笑みを返す。雨が降る駅の一角の花屋。その時そこは確かに晴れていたように感じた。
道端の花を撮っている人を見かけた。歩道の傍ら、その背の高い一輪の花は、まるで背伸びして咲いているようだった。あの頑張りに気づいたのは、彼を含めて何人いるのだろうか。
花束を結う人を見かけた。束ねてる花のように赤い髪のその人は、穏やかな表情で作業を進める。変わった柄のエプロンも相まって、おとぎ話のような光景だった。
花と繋がりを持った時、その人の今はいつもより美しくなる気がする。そこにある時間は間違いなく、ちょっとだけ素敵な時間になっているはずだ。その瞬間に出会えた時、自分もちょっとだけ優しい気持ちになれるような気がするから不思議だ。
花見をする人のことを「花人」というらしい。花の下で酒を酌み交わし、歌い笑い合う花見も嫌いではない。ただ、花と出会った人を見かけてその物語を想像する、僕のしているこんな花見もやってみると面白い。きっと僕らも「花人」となり、僕たちの今もちょっとだけ素敵なものになるような気がするのだがどうだろうか。
自転車のカゴに、小さな鉢に入った花を並べている人を見かけた。色とりどり様々な種類の小さな花たちは本当に自転車のカゴに咲いているようだった。まるで絵本のようだ。それにまたがりサングラスをかけて漕ぎ始めた色黒赤タンクトップに金色ネックレスがよく映える、筋肉質の男性の物語はどんなものなのだろうか。
いや花より気になるって。
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