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12月にあしあと

あんまり面白くない話だ。
僕には婚約者なんてものがいた。
そう、いた、だ。
昨年12月にすっかりとぽいっとからっと捨てられてしまったのだ。
あなた以上の人にはきっと出会えないナンテおっしゃっていた向こうさんには、早々に新しい相手ができたようなので、ほんとにぷいっとぺらっとささっと僕のことは無くしてしまいたかったのだろう。

泣いたとも。ええ、そりゃあね。
ここに書けないことがたんまりあるくらいには泣くどころじゃなかったともさ。
あんなに好きだなんだとのたうち回っていた私の作品たちのことも、あっという間に見なくなってしまったようだ。
あじゃぱあ。
初めて「ご飯が食べられない」という経験をしましてね、2ヶ月は2日に1食の生活が続いたそうな。タバコまで吸っちゃってね。この期間は一口サイズの小さいチョコを食べても戻してしまうくらい体調がけちょんけちょんだった。
自分では気づいてなかったが、知人に気づいてもらえなくなるくらいには痩せ細っていたらしい。
まあ、人間とはよくできたもんでして、なんとかゲッソリからガリガリくらいには戻れたわけでございますよ。なんとか絵も描けて、外に出ようとも思えるようになりまして、周りの人には感謝してもしきれない今日このごろです。

とはいえ、思い出さないようにしても体は過去一の危険状態を覚えているようだ。12月のXデーが近づいてくると「そういう時期だろ?」みたいな顔して体が食べることを受け付けなくなってきているのだ。
これはいかん。
あったかい具なしのうどんやらーめん、栄養ゼリーなどに時折野菜を添えるなどしてなんとか食べるようにしている。
かなりてきとうな食事ではあるが、今は適当なのかもしれない。

今年お世話になったスナックで「その子はあなたのところで休んでいっただけよ。あなたは捨てられたんじゃない、窓を開けてたら入ってきた動物が勝手に休んで出ていっただけよ。」とお言葉をいただいた。
多分そうなのだろう。僕も12月に深くつけられた動物のあしあとにそんな文句を言いたいだけなのだ。

あしあとにまだしばらくは、なみなみとお酒を注いだり煙草の吸殻を詰め込んでいく日々を送るだろう。
それはそれでいつか愛せる日にもなるだろう。
そんなことを思えるだけ元気になったということにして寝よう。

ところでこの時期は末端が冷え、足先がしびれてくることにも注意が必要である。
急に立ち上がるとあらぬ方向に足をぶつけたりするのだ。

そう、僕もぶつけたのだ。
泣いたとも。ええ、そりゃあね。



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